全固体電池市場、2040年に3兆8605億円規模へ:富士経済が世界市場規模を予測
世界の全固体電池市場は、2022年見込みの60億円に対し、2040年には3兆8605億円規模に拡大する。富士経済が予測した。
硫化物系の全固体電池が市場をけん引
富士経済は2022年11月、世界の全固体電池市場を調査し、2040年までの予測結果を発表した。市場規模は2022年見込みの60億円に対し、2040年には3兆8605億円規模になると予測した。特に、硫化物系の全固体電池が市場をけん引するとみている。
今回の調査は、高分子系や酸化物系、硫化物系など「全固体電池」5品目の他、ナトリウムイオン二次電池やカリウムイオン二次電池、マグネシウム二次電池といった「ポストリチウムイオン二次電池」5品目および、金属空気二次電池や全樹脂電池などの「新型二次電池」9品目を対象にした。調査期間は2022年5〜11月である。
固体電解質を用いた全固体電池は、液体の電解液を用いた従来のリチウムイオン二次電池と比べ、「温度変化に強い」「安全性が高い」「急速充電が可能」など多くの特長があり、電気自動車(EV)の電源として注目されている。「ESS(電力貯蔵システム)」や「ドローン」「空飛ぶクルマ」といった飛行体などへの搭載にも期待している。
固体電解質として現在は、「高分子系」と「酸化物系」の材料が多く用いられ、わずかではあるが「硫化物系」も利用されている。高分子系を用いた全固体電池は主に、カーシェアリングや路線バスなどの商用EV向けに搭載されているという。
酸化物系を用いた全固体電池は、小型サイズが中心でIoT(モノのインターネット)機器などへの搭載が進む。一方、大型サイズについては、固体電解質をベースに電解液やゲルポリマーを添加した疑似固体の実用化が進んでいるという。疑似固体を用いた電池は、中国製EVへの搭載が始まる見通しで、2025年に向けて市場拡大が見込まれている。この結果、酸化物系を用いた全固体電池の市場規模は、2022年見込みの39億円に対し、2040年は1兆2411億円と予測した。
これに対し硫化物系の全固体電池は、xEV向けとして期待されている。トヨタ自動車が2020年代前半にHVへ搭載を予定。2030年までにはEVへの搭載も進み、2040年に向けて市場の拡大が期待されている。現状では市場規模も極めて小さいが、2040年には2兆3762億円規模が見込まれている。
今回の調査報告書では全固体電池以外でも、市場規模こそまだ小さいが、ナトリウムイオン二次電池や金属空気二次電池といった「次世代電池」の動きにも注目している。
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