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5G(SHF帯)対応の「電磁波吸収材料」を開発電磁波吸収能や伝送減衰率が高い

東北大学とトーキンは、鉄−クロム−コバルト(Fe-Cr-Co)系合金を用い、5G(第5世代移動通信)システムに対応する「電磁波吸収材料」を開発した。市販されてい同様の材料などに比べ、電磁波を吸収する能力は1.5〜2倍、伝送減衰率は2倍高いという。

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レアアースフリーのFe-Cr-Co系合金を採用

 東北大学大学院工学研究科の杉本諭教授らとトーキンの研究グループは2023年3月、鉄−クロム−コバルト(Fe-Cr-Co)系合金を用い、5G(第5世代移動通信)システムに対応する「電磁波吸収材料」を開発したと発表した。市販されている同様の材料などに比べ、電磁波を吸収する能力は1.5〜2倍、伝送減衰率は2倍高いという。

 レアアースフリーのFe-Cr-Co系合金は、東北大学の金子秀夫教授らが1971年に開発した永久磁石材料である。今回は、このFe-Cr-Co系合金を用いて、SHF帯(3GHz〜30GHz)に対応する電磁波吸収材料を開発した。特に、「Fe-Cr-Co系合金の特長である、塑性加工が可能で平らにできる点を生かした」という。

Fe-Cr-Co系合金におけるスピノーダル分解後の走査透過電子顕微鏡(STEM)像。左上は反射電子像、右上と下はFe、Cr、Coの元素マップ像
Fe-Cr-Co系合金におけるスピノーダル分解後の走査透過電子顕微鏡(STEM)像。左上は反射電子像、右上と下はFe、Cr、Coの元素マップ像 出所:東北大学他

 具体的には、市販されている平均粒径が約20μmのFe-Cr-Co系ガスアトマイズ粉末を原料として用いた(試料As)。この粉末に対して多段時効処理(試料C)を行い、ある試料については続けて連続冷却処理(試料D)を施した。さらに、これらの試料に対しボールミル加工を行い平らな粉末を作製(As-BM、C-BM、D-BM)した。こうして得られた粉末をエポキシ樹脂に詰めて「樹脂複合体」を作製し、高周波磁気特性や電磁波吸収特性を評価した。

 微細な組織を観察したところ、ボールミル加工によってFe-Cr-Co粉末の形状だけでなく、スピノーダル分解したα1相も平らになっていることを確認した。また、複素比透磁率の周波数依存性を分析したところ、「球状粉末と比較して平らな粉末が高い透磁率を示す」ことや、「充填(じゅうてん)率の上昇によってさらに透磁率が上昇する」ことが分かったという。特に、C-BM試料では電磁波吸収特性を支配する「μr”」が3.4GHzにおいて「6.9」と高い値を示した。

Fe-Cr-Co系合金粉末を用いた樹脂複合体の断面写真(As-BMの粉末を利用)
Fe-Cr-Co系合金粉末を用いた樹脂複合体の断面写真(As-BMの粉末を利用) 出所:東北大学他

 Fe-Cr-Co系合金の平らな粉末を用いた樹脂複合体の電磁波吸収効果とその極大値(ω×μr(peak))を測定した。これにより、市販の材料や5G用ノイズ抑制シートに比べ、Fe-Cr-Co系合金材料は6GHz付近とSHF帯(3GHz〜30GHz)で、高い電磁波吸収効果が得られることを確認した。


Fe-Cr-Co系合金粉末を用いた樹脂複合体および、市販材料の電磁波吸収効果と極大値(ω×μr(peak))の周波数依存性 出所:東北大学他

 さらに、Fe-Cr-Co系合金のボールミル粉末(As-BM、C-BM、D-BM)を用いた樹脂複合体の電子回路基板における電磁ノイズ抑制効果(伝送減衰率ΔPloss/Pin)を検証した。伝送減衰率が高いほど、ノイズ抑制効果に優れた材料となる。ここでも、C-BMとD-BM試料は、SHF帯で優れた電磁波吸収特性を示すことが分かった。

Fe-Cr-Co系合金のボールミル粉末(As-BM、C-BM、D-BM)を用いた樹脂複合体を、50Ω系マイクロストリップ線路基板上面に実装し測定した伝送減衰率の周波数依存性
Fe-Cr-Co系合金のボールミル粉末(As-BM、C-BM、D-BM)を用いた樹脂複合体を、50Ω系マイクロストリップ線路基板上面に実装し測定した伝送減衰率の周波数依存性 出所:東北大学他

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