FLOSFIAとJSR、イリジウム系成膜材料を新たに開発:酸化イリジウムガリウム実用化へ
FLOSFIAとJSRは、p型半導体である酸化イリジウムガリウムの実用化に向け、新たなイリジウム系成膜材料を共同開発したと発表した。新材料は、FLOSFIA製コランダム型酸化ガリウムパワー半導体「GaO」シリーズの第2世代ダイオードより適用する予定である。
FLOSFIA製コランダム型酸化ガリウムパワー半導体に適用
FLOSFIAとJSRは2023年3月、p型半導体である酸化イリジウムガリウム(α-(IrGa)2O3)の実用化に向け、新たなイリジウム系成膜材料を共同開発したと発表した。新材料は、FLOSFIA製コランダム型酸化ガリウム(α-Ga2O3)パワー半導体「GaO」シリーズの第2世代ダイオードより適用する予定である。
酸化イリジウムガリウムは、α-Ga2O3と組み合わせて用いるp型半導体。バンドギャップが約5eVと極めて大きく、ホール濃度は1×1019cm−3と高濃度である。ところが、「イリジウム源となるイリジウムアセチルアセトナート(Ir(acac)3)の結晶成長レートは、酸化ガリウムに比べ極めて遅く、生産性に欠ける」「トレンチ内部への安定的な成膜が難しい」など、量産に向けてはいくつかの課題があったという。
FLOSFIAは、コランダム型酸化ガリウム(α-Ga2O3)パワー半導体「GaO」シリーズを作製する時に、JBS(ジャンクションバリアショットキー)構造を適用し、酸化イリジウムガリウムを埋め込んで結晶成長を行っている。この時、独自のミストドライ法を用いて結晶を成長させるが、今回は溶液に新開発のイリジウム系成膜材料を用いた。
この結果、成長レートは従来の10倍以上となった。SEM(走査電子顕微鏡)によりこのトレンチ構造の断面を観察したところ、酸化イリジウムガリウムの膜厚分布は均一で、カバレッジ良く成膜がなされていることも分かった。
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