東芝、蓄電池モジュールの状態をBLEで無線監視:連続的な遅延を防ぐシステム設計に
東芝は、蓄電池システム内にある蓄電モジュールの状態について、「Bluetooth Low Energy(BLE)」を用いて監視できることを実証した。状態監視を無線化しても、システムエラーの発生は10年間で1回以下に抑えることが可能だという。
システムエラーの発生は10年間で1回以下に
東芝は2023年6月22日、蓄電池システム内にある蓄電モジュールの状態について、「Bluetooth Low Energy(BLE)」を用いて監視できることを実証したと発表した。状態監視を無線化しても、システムエラーの発生は10年間で1回以下に抑えることが可能だという。
蓄電池システムは、蓄電容量などによって多くの蓄電モジュールを組み合わせて構成される。システムを安全に稼働させるには、蓄電モジュールごとに電圧や温度を監視し、適切に制御する必要がある。ここで用いられるのがCMU(セルモニタリングユニット)とBMU(バッテリーマネジメントユニット)である。
これまではCMUとBMU間の通信は有線で行われてきた。ところが、絶縁耐性や設置の自由度、配線ミスの防止などを考慮し、近年は無線を用いた通信の要求が高まっているという。ただ、電波の干渉や筐体内部における反射などが発生し、通信が不安定になりやすいという課題もあった。
そこで東芝は、蓄電池システム内でBLEを適用するための設計を行った。例えば、蓄電池システムの監視周期に合わせて、単発的な遅延は許容し、連続的な遅延を防ぐシステム設計とした。具体的には、許容される監視周期を100〜200ミリ秒とし、3回連続で通信できないと、蓄電モジュールの充放電を止める。そして、監視周期を超える通信遅延を10-4以下に抑えることとした。
実験では、各BMUに2個のBLEモジュールを設置し、11台ずつCMU側のBLEモジュールを無線接続した。その上で通信遅延の測定を延べ4日間実施した。この結果、160ミリ秒程度の監視周期であれば、通信遅延を10-4以下に抑えられることが分かった。また、BLE通信に関して、求める信号に対する干渉をモデル化し、確率計算を行えば遅延特性が説明できることを明らかにした。
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