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磁性メタマテリアルを用いた光源の新原理を提案ミリ波やテラヘルツ光に周波数変換

東北大学の研究グループは、6G(第6世代移動通信)システムに向けて、磁性メタマテリアル(磁石を用いた人工構造物質)を用いた光源の新原理を提案した。この技術を応用すれば、ミリ波やテラヘルツ光への周波数変換が可能となり、室温動作の小型光源を実現できるという。

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小型で室温動作する周波数可変の6G用光源が実現可能に

 東北大学の研究グループは2023年4月、6G(第6世代移動通信)システムに向けて、磁性メタマテリアル(磁石を用いた人工構造物質)を用いた光源の新原理を提案した。この技術を応用すれば、ミリ波やテラヘルツ光への周波数変換が可能となり、室温動作の小型光源を実現できるという。

 時間的に屈折率が変化する「時間変調メタマテリアル」が、近年注目を集めている。これを用いると、電磁波の周波数変換が可能である。これまで開発された多くの時間変調メタマテリアルは、誘電率を時間的に変調することで屈折率を時間的に変える方式であった。これに対し、透磁率を時間的に変調することで屈折率を変化させる方法もあるが、研究事例としてこれまでは、ほとんど報告されていなかったという。

 そこで研究グループは、透磁率を時間的に変調する「時間変調磁性メタマテリアル」の原理検証実験を行うことにした。実験ではまず、磁石(ニッケルと鉄の合金であるパーマロイ)と、重金属(プラチナ)の二層膜を作製した。

 作製した二層膜に交流電流を印加すると、スピンホール効果でスピン流が発生し、これがパーマロイに注入される(スピン注入)。これによって、パーマロイの磁化にスピントルクを及ぼし、強磁性共鳴が誘起された(スピントルク強磁性共鳴)。

今回作製した磁性メタマテリアルの構造イメージ 出所:東北大学
今回作製した磁性メタマテリアルの構造イメージ 出所:東北大学

 同時に、直流電流を印加することで、直流のスピン流も注入した。今回は基板にシリコンを採用した。これによって熱伝導性が向上し、二層膜に大電流を流すことができ、強いスピン注入が可能となった。この結果、パーマロイに大きなトルクを働かせ、共鳴条件を大きく変化させることができたという。実験結果をもとに理論計算を行い、「共鳴条件が変わることで透磁率が大きく変化する」ことも明らかにした。

実験結果から計算される磁性メタマテリアルの透磁率変化 出所:東北大学
実験結果から計算される磁性メタマテリアルの透磁率変化 出所:東北大学

 研究グループによれば、「透磁率だけでなく誘電率も同時に時間変調できる媒質を組み合わせれば、フレネルドラッグと呼ばれる、移動媒質を模倣する現象も可能になる」という。

 今回の研究成果は、東北大学高度教養教育・学生支援機構の児玉俊之特任助教、多元物質科学研究所の菊池伸明准教授、岡本聡教授、大学院理学研究科の大野誠吾助教、高度教養教育・学生支援機構の冨田知志准教授(大学院理学研究科兼務)らによるものである。

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