Ni/Co不使用のリチウムイオン電池正極材料を開発:高エネルギー密度かつ長寿命を実現
横浜国立大、パナソニック エナジー、立命館大らの研究グループは、リチウムイオン電池向けの新しい正極材料として、コバルト(Co)/ニッケル(Ni)を使わない新しいリチウム過剰型マンガン系酸フッ化物酸化物材料の開発に「世界で初めて」成功したと発表した。
横浜国立大、パナソニック エナジー、立命館大らの研究グループは2023年7月7日、新しいリチウム過剰型マンガン系酸フッ化物酸化物材料(Li2MnO1.5F1.5)の開発に「世界で初めて」(同研究グループ)成功したと発表した。同材料は、Co(コバルト)やNi(ニッケル)フリーでありながら、高エネルギー密度かつ長寿命の電池正極材料を実現できるとする。
リチウムイオン蓄電池市場は、EV(電気自動車)の開発/普及により急拡大している。EVの価格低下のためには、リチウムイオン電池の高エネルギー密度と低価格を両立する電池材料が不可欠となる。また、近年は、リチウムイオン電池の正極材料に従来使われているニッケルの需要が、EVの販売増加で急拡大していることから、世界的なニッケル資源獲得競争が激化している。そのため、ニッケル系材料と同等以上の性能でありながら、比較的安価な鉄系材料と同等のコストを実現する材料の開発が求められている。
同研究グループは今回、鉄と同様に資源埋蔵量が豊富で安価なマンガンに着目し、独自に開発した岩塩型構造を有するLi2MnO1.5F1.5を開発した。
マンガン系酸フッ化物材料は、電解液に溶出しやすいので、サイクル寿命が短いという課題があった。研究グループは、リチウム塩濃度が高い「濃厚電解液」を電解液として利用することで、この溶出を抑えることに成功。サイクル寿命を向上し、高いエネルギー密度と優れた寿命特性を両立したとする。電池材料としての特性は、鉄系材料を大きく超えるものだという。
従来、高エネルギー密度の電池材料としては、F(フッ素)を含まないリチウム過剰型マンガン系酸化物(Li2MnO3)系材料が広く研究されてきた。しかし、同材料は、充放電時に酸素が酸化され、酸素分子として脱離することによる、充放電時の電圧低下が課題となっていた。その点、高濃度のフッ素を含有させた今回の新材料(Li2MnO1.5F1.5)では、マンガン酸化数の低減効果によって酸素が酸化されないため、電圧低下が生じないという。
同研究グループは、リリースで「この研究は、リチウムイオン蓄電池の高性能化/低コスト化の両立につながる研究だ。今後の研究の進展により、鉄系材料と同程度のコストで、より高性能で実用的なマンガン系材料を用いたリチウムイオン蓄電池の開発が期待できる」とコメントした。
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