共有結合性有機構造体の合成法と薄膜化手法を開発:電極上にCOF膜を直接固定化
東京工業大学は、多孔質材料である共有結合性有機構造体(COF)を電気化学的に合成するとともに、常温常圧下で電極上にCOF膜を直接固定化できる手法を開発した。
常温常圧下で発生させたEGAを触媒に、モノマーの縮合反応を行う
東京工業大学物質理工学院応用化学系の稲木信介教授と白倉智基大学院生(当時)らは2023年7月、多孔質材料である共有結合性有機構造体(COF)を電気化学的に合成するとともに、常温常圧下で電極上にCOF膜を直接固定化できる手法を開発したと発表した。
COFは、熱や化学的に安定しているため、ガスの吸着・分離材料や触媒、電極材料としての応用が期待されている。ただ、高温高圧下での合成法や酸触媒を用いる従来の方法では多くの場合、溶媒に溶けにくく、高温でも液体に状態変化しにくいバルク状粉末となる。このため、成型や加工性に課題があったという。
そこで研究チームは、常温常圧下で電気化学的に発生させた電解発生酸(EGA)を触媒としてモノマーの縮合反応を行い、電極近傍でCOFを合成することにした。実験では、電解質および1,2-diphenylhydrazine(DPH)を含む電解液に板状電極を浸し、常温常圧下で電位を印加した。これにより、電極近傍でDPHの酸化反応が進行し、放出されたプロトンが電解発生酸として機能することを確認した。酸の発生を時空間的に制御できることも分かった。
続いて、電極をCOFの原料である「アミンモノマー」と「アルデヒドモノマー」およびDPHを含む電解液に浸し、電位を印加した。そうしたところ、電解発生酸を触媒として縮合反応が進行し、モノマーの重合体であるCOF膜が電極表面に析出することを確認した。
なお、COFの膜厚は電位掃引のサイクル回数に応じて増大したという。これにより、電解発生酸の生成量を制御すれば、得られるCOF膜の厚みを制御できることが分かった。小角X線散乱測定や窒素ガス吸着測定によって、作製したCOF膜が高い結晶性と多孔質構造を有していることが明らかになった。さらに、異なるアミンモノマーとアルデヒドモノマーを組み合わせれば、三次元状のCOF材料を合成できることも確認した。
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