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6秒の歩行データから病的な歩行をAIで推定重大疾病の早期発見に

名古屋市立大学歩行らの研究グループは、深層学習を用いて、スマートフォンアプリで撮影した6秒の歩行データから病的な歩行を判別することに成功した。

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 名古屋市立大学、山形大学、東北大学、デジタル・スタンダード、信愛会脊椎脊髄センター、洛和会音羽病院正常圧水頭症センターらの研究グループは2023年7月14日、深層学習による歩行時の3次元相対座標推定を、別の深層学習と組み合わせることで、スマートフォンアプリで撮影した6秒の歩行データから病的な歩行を判別することに成功したと発表した。

 同研究は、デジタル・スタンダードが開発した、深層学習を用いて歩行動作を解析する非公開アプリ「TDPT-GT(Three D Pose Tracker for Gait Test)」を使用。同アプリで歩行時の全身(頭から足先までの24カ所)の3次元相対座標を自動推定し、推定した情報を「LightGBM(Gradient Boosting Machine)」という深層学習を活用して分析することで、病的な歩き方を判別した。

 実証実験では、何らかの病的な歩き方をしている多様な神経筋疾患の患者114人と、疾患がなく病的な歩き方ではないボランティア160人を対象に、直径1mの円を2周する様子をTDPT-GTおよびGBMを用いて分析した。結果、病的な歩き方を感度65.2%、特異度78.1%で判別することに成功したという。

同研究のイメージ
同研究のイメージ【クリックで拡大】 出所:同研究グループ

 歩行は日常生活を支える重要な動作だ。しかし、歩行は下肢のみならず、全身の各身体部位の動作を滑らかに組み合わせて行う複雑な動作であり、歩行によって病的かどうかを判断することはベテラン医師でも難しいという。また、従来の歩行解析研究では、全身にマーカーを付けて複数台のカメラを連動させ、マーカーの動きを3次元的に追跡するモーションキャプチャーシステムが使われてきた。しかし、モーションキャプチャーシステムは、広い設置場所や高額な機器が必要で、計測/解析にも時間がかかるという課題があった。今回の研究により、体に何もつけないままスマホで撮影し、わずか6秒の歩行データだけで病的な歩き方を判別できることを証明した。

 今後について、同研究グループはリリースで「小刻み歩行や痙性歩行、突進歩行など、疾患の影響による可能性がある歩き方を判別する深層学習を行い、それぞれの歩き方と関連する特発性正常圧水頭症、パーキンソン病、頚椎症、脳卒中などの疾患を早期に発見する技術へと発展させていきたいと考えている」とコメントした。

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