車体や建物自体に蓄電できる3Dカーボン材料を開発:構造的エネルギー貯蔵を可能に
東北大学らの研究チームは、自動車のボディや建物自体にエネルギーを貯蔵できるようにする「3次元(3D)カーボン材料」を開発した。荷重を支える構造部分に蓄電機能を持たせることで、「構造的エネルギー貯蔵」が可能となる。
立体的な構造にしても蓄電機能を発現
東北大学らの研究チームは2023年8月、自動車のボディや建物自体にエネルギーを貯蔵できるようにする「3次元(3D)カーボン材料」を開発したと発表した。荷重を支える構造部分に蓄電機能を持たせることで、「構造的エネルギー貯蔵」が可能となる。
研究チームはこれまでも、エネルギー貯蔵デバイス技術についてさまざまな研究を行ってきた。今回は、光造形3Dプリンターを用いて造形する光硬化性樹脂に、酸化マグネシウム(MgO)ナノ粒子を混合した複合材料樹脂を調整してマイクロラティス構造を作り、構造を保ったまま炭素化した。
こうして得られたカーボンマイクロラティスを60℃の塩酸に1日半浸した。これにより、含有されているMgOナノ粒子を脱離し、格子構造の孔(〜100μm)を維持したまま柱の内部にナノ多孔質を導入した。顕微鏡による観察結果から、柱の内部にはMgOナノ粒子の脱離に由来するメソ孔(〜50nm)に加え、マクロ孔(〜2μm)やミクロ孔(〜1nm)があることを確認できたという。
マクロ孔やメソ孔、ナノ孔のネットワークは、炭素化による線形収縮率をこれまでの60〜70%から、40%まで減少させる。その上、はりの内部に広がってラティスと合わせて構造全体に液体電解質を輸送する流路として機能する。しかも、ラティス構造は微細なほど充放電性能が向上するという。
具体的には、水系電解質および有機系電解質の両方で、最大105F・g-1および、13.8F・g-1の比容量となった。電極面積当たりに換算すると、それぞれ11.5F・cm-2および、1.5F・cm-2である。
従来の電気化学キャパシターは、薄膜形状に限られていた。これに対し今回の研究成果は、立体的な構造でも蓄電機能が発現できることを実証した。また、キャパシターとして機能する比表面積(150〜300m2g-1)を有しながら、圧縮強度は7.45〜10.45MPa、剛性率は400〜700MPaを達成した。
研究チームは今後、ドローンのボディやモバイル機器の筐体への応用を目指し、正極・負極合わせた充電デバイスの開発に取り組む計画である。
今回の研究成果は、東北大学材料科学高等研究所の工藤朗助教、唐睿特任助教(研究当時)、折茂慎一教授、西原洋知教授、同大学多元物質科学研究所の金丸和也大学院生、吉井丈晴助教、同大学学際科学フロンティア研究所の韓久慧助教(研究当時)、同大学金属材料研究所の木須一彰助教、米国ジョンズ・ホプキンス大学の陳明偉教授らによるものである。
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