米国の対中規制強化がもたらす、半導体業界への「歓迎できない」影響:NVIDIA「A800」「H800」など対象に(2/2 ページ)
米国は2023年10月17日、中国向けの半導体輸出規制強化措置を発表した。アナリストは、今回の新たな措置はNVIDIAやIntelの中国向けGPUなどが対象となる他、中国による国産の代替品確保を加速や報復措置のきっかけとなりうるもので、「決して歓迎されるものではない」と指摘している。
さらなる重要鉱物の輸出規制や、サイバーセキュリティ審査の可能性
中国は2022年10月の措置を受け、米国のメモリ最大手Micron Technology(以下、Micron)に対してサイバーセキュリティ審査を行うという対応に出た。その結果、中国内でMicron製品の調達が一部禁止されることになった。また、中国政府は数カ月前に、米国が発表しようとしている輸出規制に対する警告として、半導体製造に不可欠とされる重要な鉱物であるガリウム(Ga)とゲルマニウム(Ge)の輸出規制を実施した。Triolo氏は、「中国は、さらなる制裁措置を講じるとみられる」と付け加えた。
「中国政府は今後、重要鉱物に関する規制強化や、米国企業に対する新たなサイバーセキュリティ審査の実施など、さまざまな手段で対応するだろう」(Triolo氏)
さらにTriolo氏は、「一方で中国政府は、国内産業の米国技術への依存度を低減するための方法を模索していくとみられる。新たな規制措置は、中国企業がさまざまな回避策を見つけ出し、代替となるサプライチェーンの開発や、米国技術の排除に一層拍車を掛けていくことになるだけだ。例えば、GPUに関しては既に、性能の劣るが代替製品が中国国内に存在している。規制の強化は、Huaweiのスマートフォン『Mate 60』などのように、高性能半導体チップの製造能力を開発する取り組みを加速させることになるだろう。また中国の報復措置の形態やレベルによっては、米中関係がさらに下方スパイラルに陥る可能性がある」と述べている。
CNBCの報道によると、HuaweiはAppleに取って代わり、中国最大のスマートフォンブランドとして再浮上したという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- それでもスマホの技術進化は続いている、「iPhone 15 Pro Max」「Mate 60 Pro」を分解
今回は、2023年夏に発売された話題のスマートフォン、Apple「iPhone 15 Pro Max」とHuawei「Mate 60 Pro」の分解結果を報告する。 - 米中対立の中、見習うべき点が多い欧州企業の戦略
中国のHuaweiが5G(第5世代移動通信)対応のスマートフォンを発売したことを受け、米国による対中の半導体規制がより強化される可能性が高い。今後、われわれおよび日系各社は、どのようなスタンスで臨むべきなのか、考えてみたいと思う。 - 23年2Qの世界ファウンドリー市場、上位10社は1.1%減
台湾の市場調査会社TrendForceは2023年第2四半期の半導体ファウンドリー市場調査結果を発表した。それによると、上位10社の売上高は前四半期比1.1%減のマイナス成長となったが、第3四半期からは回復に向かう見込みだという。 - AI需要増で2023年のAIサーバ出荷台数は40%増に
近年のAI需要の高まりを受け、AIサーバの出荷台数が2023年、前年比38.4%増と飛躍的に増加するという。台湾の市場調査会社TrendForceが予測を発表した。 - ここが変だよ 日本の半導体製造装置23品目輸出規制
2023年3月、経済産業省は、半導体製造装置など23品目を輸出管理の対象として追加する方針を固めた。だが、ここで対象とされている製造装置、よくよく分析してみると、非常に「チグハグ」なのである。何がどうおかしいのか。本稿で解説したい。 - Huaweiへの半導体全面禁輸で拡大する米中貿易戦争
米バイデン政権は、Huaweiに製品を輸出する米国企業へのライセンス供与を停止し、中国Huaweiに対する米国技術の販売を、完全に禁止することを目指しているという。専門家の解説を紹介する。