AIでデジタル制御する機能を搭載した基地局用「GaN増幅器」:ポスト5Gの用途を想定
三菱電機と湘南工科大学は、AI(人工知能)でデジタル制御する機能を備えたポスト5G向け基地局用「GaN増幅器」を開発し、動作実証に成功した。開発品は−45dBcのひずみ性能と、4000MHzという動作周波数帯域幅を両立させた。
2入力型GaN増幅器の性能評価を30秒以下で完了
三菱電機と湘南工科大学は2023年11月、AI(人工知能)でデジタル制御する機能を備えたポスト5G向け基地局用「GaN増幅器」を開発し、動作実証に成功したと発表した。開発品は−45dBcのひずみ性能(ACLR:隣接チャネル漏えい電力比)と、4000MHzという動作周波数帯域幅を両立させた。同時に、2入力型GaN増幅器の性能を極めて短い時間で評価できるシステムも開発した。
三菱電機と湘南工科大学は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が進める「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の一環として、2020年10月から「基地局増幅器のための広帯域化回路技術の研究開発」に取り組んできた。
ポスト5G向け基地局用GaN増幅器では、広帯域動作が求められる。これを実現するには2入力型構成が有効といわれているが、動作周波数や出力電力レベルなどに応じて、2つの高周波入力信号を適切に制御する必要があった。
そこで今回、三菱電機のAI技術を活用し、GaN増幅部に入力する2つの高周波信号をデジタル制御した。この結果、40%以上という動作効率を維持しながら、−45dBcのひずみ性能と、4000MHzの動作周波数帯域幅を両立させることに初めて成功した。
また、2個の入力端子を備えたGaN増幅器の性能を短時間で評価するためのシステムも開発した。今回、市販測定器を制御する独自プログラムを新たに考案し採用することで、18万2160回にも及ぶ評価回数を、30秒以下という短い時間で完了した。評価時間は従来システムに比べ、100分の1以下に短縮できたという。
三菱電機は今後、実用化に向けて研究開発を継続し、2028年以降の事業化を目指す。湘南工科大学は、ポスト5G基地局における無線部の基礎研究を継続するとともに、次世代の技術者育成などにも力を入れる。
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