富士通が新光電気を売却へ JIC、大日本印刷、三井化学に:「先進半導体パッケージの事業化を支援」(2/2 ページ)
富士通が、半導体パッケージ基板を手掛ける子会社の新光電気工業を、政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)などに売却すると発表した。買収総額は約6850億円に上る見通し。
買収の流れ
TOBは、各国の競争当局などから承認を得たうえで、2024年8月下旬ごろに行われる予定だ。買い付け価格は1株当たり5920円で、JICの傘下であるJICキャピタル(JICC)の100%子会社として設立したJICC-04を公開買い付け者とし、富士通保有分(および新光電気が保有する自己株式)以外の株式を対象にTOBを実施(買い付け代金の総額は約3998億円を予定)。その後、新光電気が公開買い付け者から資金提供を受けるなどし、富士通の保有分を全て取得(取得費用は約2851億円となる見込み)する。
DNP、三井化学も公開買付者に出資し、最終的な出資比率はJIC(JICCが管理/運用するファンド)が80%、DNPが15%(出資総額は約850億円を予定)、三井化学が5%(出資総額は約350億円を予定)となる。
JIC、DNP、三井化学の狙い
JICCは、新光電気を取り巻く事業環境について「市場ニーズを先取りする技術開発や機動的な設備投資の実行がますます重要となり、加えてそれらに要する資金規模も大型化することが想定される」と説明。短期的な業績変動にとらわれない中長期的な観点での取り組みや意思決定の迅速化を図るために、新光電気の非公開化が重要だとしている。
DNPは、2023〜2025年度中期経営計画において半導体関連を注力事業領域と位置付け、フォトマスクやリードフレームを手掛けている。また、次世代半導体パッケージの重要部材である「有機インターポーザ」や「TGV(ガラス貫通電極)ガラスコア基板」などの開発を進めている他、光電融合といった次世代技術に対応したビジネスも展開している。DNPは今回の出資について、現時点で新光電気との協業に関する合意事項はなく、公開買付者への出資の条件にはなっていないとしつつも、「将来的に、長年培った微細加工技術、精密塗工技術および材料開発技術と対象者が有する半導体パッケージ関連技術を組み合わせることで、新光電気の目指す次世代半導体ビジネスに貢献することができる」などとコメントしている。
三井化学も同様に、現時点で新光電気との協業に関する合意事項はなく、公開買付者への出資の条件にはなっていないとしつつ、将来的に三井化学の材料技術との連携によって「新光電気の次世代半導体パッケージ基板の分野における市場競争力の強化/維持および顧客へのソリューション力の強化を図ることができる」などと述べている。
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