連載
4Gから5Gミリ波の移動体通信向けフロントエンドパッケージ(前編):福田昭のデバイス通信(439) 2022年度版実装技術ロードマップ(63)(2/2 ページ)
今回は第3章第3節第5項(3.3.5)「RFデバイスのパッケージ構造と高速・高周波向け配線材料」の概要を紹介する。
5Gミリ波帯端末のFEMでは基板の誘電体材料が大きく変化
5Gミリ波帯の移動体通信端末では、28GHz帯の周波数帯域を利用する。5Gサブ6の4.5GHz帯からはかなり離れており、その分だけ無線の波長がかなり短い。一般に無線電波は周波数の向上とともに伝送損失(伝送距離当たり)が増える。FEM内でも同様であり、伝送損失の少ない材料が望ましい。
5Gミリ波帯FEM基板の誘電体材料には、ポリフェニレンエーテル(PPE:Poly Phenylene Ether)、ベンゾシクロブテン(BCB :Benzo-Cyclo-Butene)、エポキシ樹脂(シリカフィラーを多く含むタイプ)、などがある。要求仕様としては25GHz〜100GHzの周波数領域で比誘電率が2.7以下、誘電正接が0.005以下、吸水率が0.1%以下となる。吸水率の低さは特に重要であり、吸水率が1%程度でも誘電正接が大きく増えてしまう(耐熱性絶縁材料の代表であるポリイミドの吸水率は3%程度)。
5Gミリ波帯の移動体通信端末向けFEMの断面図。低誘電率かつ低誘電正接、低吸水率の多層基板を採用した。基板の両面に高周波ICとフィルターを搭載してある。受動素子(キャパシターとインダクター)は配線と誘電体を利用して多層基板に作り込んでいる。外部端子はBGAタイプである[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(2022年7月7日に開催された完成報告会のスライド)
配線の寸法精度も重要であり、配線幅と間隔のばらつきは±3%未満が要求される。モジュール全体の大きさは5mm角〜10mm角である。
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