全固体Liイオン電池向け酸化物固体電解質を発見:高いイオン伝導度と安全性を備える
東京理科大学とデンソーの研究グループは、全固体リチウムイオン電池向けに、高いイオン伝導度と安全性を示す「酸化物固体電解質」を発見した。
室温でバルクイオン伝導度7.0mScm-1、全イオン伝導度は3.9mScm-1
東京理科大学創域理工学部先端化学科の藤本憲次郎教授と相見晃久講師(現在は防衛大学校)、デンソーの吉田周平博士らによる研究グループは2024年4月、全固体リチウムイオン電池向けに、高いイオン伝導度と安全性を示す酸化物固体電解質「Li2-xLa(1+x)/3M2O6F(M=Nb,Ta)」を発見したと発表した。
全固体リチウムイオン電池の固体電解質としては、大別して「酸化物系」と「硫化物系」がある。硫化物固体電解質はイオン伝導度が高く注目されているが、大気中の水分と反応して有毒な硫化水素を発生させる可能性がある。これに対し酸化物固体電解質は、硫化物系に比べイオン伝導度が劣るものの、大気中で有毒なガスを発生しないため、安産性に優れている。
そこで研究グループは、「Li2CO3」や「La2O3」「M2O5(M=Nb,Ta)」「LaF3」および、「LiF」を用い、大気中で安定しているパイロクロア型結晶構造の酸化物「Li1.25La0.58Nb2O6F」と「Li1.00La0.66Ta2O6F」を合成した。
これらの導電率を計測したところ、Li1.25La0.58Nb2O6Fは、室温(〜298K)でバルクイオン伝導度7.0mScm-1、全イオン伝導度3.9mScm-1であった。これは、酸化物固体電解質のリチウムイオン伝導度よりも高く、水素ドープ「Li3N」の導電率(6.0mScm-1)に匹敵する値だという。
さらに研究グループは、合成した物質について粉末X線回折(XRD)で結晶相を同定し、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)で元素組成を分析した。これらのデータを基に、BVEL(Bond Valence Energy Landscape)法によりLiイオン伝導経路を計算した。この結果、パイロクロア型構造でLiイオンは、MO6八面体によって形成されたトンネル内に位置するFイオンを覆うような導電パスを持ち、Fイオンとの結合を順次変えながら移動することが分かった。
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