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全固体Liイオン電池用フッ化物固体電解質を開発Liイオン伝導度を向上

名古屋工業大学は日本ガイシとの共同研究により、フッ化物材料「Li3AlF6」のLi+伝導度を高めることに成功した。この材料を用い、温室プレス成型で作製した全固体リチウムイオン電池は、極めて安定に充放電できることを確認した。

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全固体リチウムイオン電池を、温室プレス成型で作製

 名古屋工業大学大学院工学研究科工学専攻(物理工学領域)の宮崎怜雄奈准教授は2024年4月、日本ガイシとの共同研究により、フッ化物材料「Li3AlF6」のLi+(リチウムイオン)伝導度を高めることに成功したと発表した。この材料を用い、温室プレス成型で作製した全固体リチウムイオン電池は、極めて安定に充放電できることを確認した。

 全固体リチウムイオン電池に用いる固体電解質として、これまでは硫化物系や酸化物系の材料が注目されてきた。ただ、大気中での安定性や電極との安定性、Li+伝導度、加工性といった課題もあった。

 研究チームが着目したのはフッ化物の固体電解質である。Li3AlF6は、Al2O3の溶融塩電解にも使われ、大気中で安定している材料である。リチウムイオン電池の正極あるいは負極のいずれと接触しても、電気分解せず安定に存在できる。このため、30年前からリチウムイオン電池への応用が検討されてきた。しかし、Li+伝導度が低く、電池の内部抵抗低減などが課題となっていた。

 そこで今回、Li3AlF6をLi2SiF6とボールミリングし、Li+伝導度を大幅に向上させた。Li3AlF6だと150℃における抵抗は約12MΩであった。これに対し、Li2SiF6とのボールミリングにより、抵抗率は約30kΩ・cmまで減少した。

左はLi3AlF6-Li2SiF6(Si:20mol%)を固体電解質に用いた全固体リチウム電池の充放電測定結果。右は充放電サイクルごとの放電容量とクーロン効率
左はLi3AlF6-Li2SiF6(Si:20mol%)を固体電解質に用いた全固体リチウム電池の充放電測定結果。右は充放電サイクルごとの放電容量とクーロン効率[クリックで拡大]出所:名古屋工業大学
左はボールミリングを行っていないLi3AlF6の150℃における測定結果。右は今回作製したLi3AlF6-Li2SiF6の測定結果
左はボールミリングを行っていないLi3AlF6の150℃における測定結果。右は今回作製したLi3AlF6-Li2SiF6の測定結果[クリックで拡大]出所:名古屋工業大学

 この値はLi+伝導度に換算すると3×10-5S/cm(@室温)であり、固体電解質として使用可能な値だという。研究チームはLi+伝導度が向上した理由について、ボールミリングによりLi3AlF6とLi2SiF6が原子レベルで混合。これによりLi3AlF6結晶中にLi+空孔が生成し、Li+が動ける隙間が形成されたため、と推測する。

 しかも、Li3AlF6-Li2SiF6はプレス成型のみで緻密化が可能である。セラミックスのように約1000℃の高温で焼き固める必要はない。Li3AlF6-Li2SiF6は、大気中に24時間放置しても分解せず、高いLi+伝導度を維持できるという。

 研究チームによれば、今回得られたLi+伝導度でも実用化レベルでは不十分だという。今後は、Li+伝導度発現のメカニズムを解明しながら、より高いLi+伝導度を実現するため、材料の改良などに取り組んでいく。

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