ハイエンドスマホのプロセッサはどこまで進化した? 最新モデルで読み解く:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(82)(4/4 ページ)
半導体投資やAI(人工知能)の話題で盛り上がる半導体業界だが、最終製品に目を向ければスマートフォンも着実に進化し、魅力的な製品が次々に発売されている。今回は、2023年後半から現在までに発売されたハイエンドスマホに焦点を当て、搭載されているプロセッサを解説する。
Google「Pixel 8」とApple「iPhone 15 Pro」のプロセッサ
図7は、「Google Pixel 8」に搭載されているプロセッサ「Tensor G3」と、Appleの「iPhone 15 Pro」に採用されているA17 Proの様子である。いずれも、上記Samsung、Qualcomm、MediaTekの新しいハイエンドモバイルプロセッサのコンペチターと位置付けられるものだ。Tensor G3はSamsungの4nm、A17 ProはTSMCの3nmで製造されているという差があるが、ともに5Gモデムを内蔵していないという特徴がある。また外販されず自社製品向けに差別化、優位化したチップになっている。
5つのチップを比べてみる
表1は、今回取り上げた5つのチップについて、CPU構成や製造プロセス、相対面積をまとめた一覧表である。CPUはいずれもArmを採用し、GPUもGoogleとMediaTekがArm。AIエンジンは各社各様だ。AI性能は33〜45TOPS、CPUコア数は6〜10とバラツキはあるものの、内部の演算器の構成は同じものになっている。
図8は、上記5種類のチップの最高周波数とシリコン面積をグラフ化したものである。Samsung 4nm製品に比べてTSMC 4nm製品の方が数パーセントではあるが、周波数が高い。3nmを活用するA17 Proは最も周波数が高く、同じ3nmを使うM3シリーズはさらに高い4GHz超えとなっている。面積は3nmで製造されるA17 Pro以外はほぼ横並びとなっている。ほぼ同等機能を搭載するチップなので、詳細差はあるもののプロセッサシリコン全体から見ればSamsung、TSMCの差はほとんどない(歩留まりなどは言及しない)。間もなく、QualcommやMediaTekからも3nmを適用した製品が出てくるので、今後も継続して比較していきます。
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