シャープがディスプレイ事業を「縮小」、黒字化最優先で再起を図る:23年度決算も大幅赤字(2/2 ページ)
シャープの2023年度決算は、売上高が前年比8.9%減の2兆3219億円、営業損益が203億円、最終損益が1499億円と大幅赤字だった。ディスプレイデバイスの不振が影響したもので、同社は「今後は黒字化に向けて、デバイス事業を縮小する」と発表した。
黒字化が最優先、2024年度は構造改革に注力
こうした方針から、2024年度は構造改革に注力する。デバイス事業の「ディスプレイデバイス」については、損益改善に向けて工場の最適化を行う。子会社の堺ディスプレイプロダクト(SDP)における大型液晶ディスプレイパネルの製造を2024年9月末までに停止する。稼働停止後は、AI(人工知能)データセンター向けとして活用する方針だ。
また、スマートフォン向けの中小型液晶ディスプレイを製造する亀山第二工場(三重県亀山市)や三重第三工場(三重県多気郡)などについても、段階的に生産能力の縮小や人員削減を行うという。具体的には、亀山第二工場で日産2000枚から1500枚に、三重第三工場で日産2280枚から1100枚に減産し、堺工場のOLEDラインは閉鎖する。
「エレクトロニックデバイス」では、カメラモジュール事業や半導体事業を他社に譲渡する方向で検討を進めている。
ブランド事業では、スマートライフ&エナジー分野における特長商品/新規カテゴリー商材の創出、ASEANや米州を中心とした海外事業の強化を行う他、事業全体で低収益事業の改善を行い、スマートライフ&エナジー、スマートオフィス、ユニバーサルネットワークの全分野での黒字化を目指す。
2024年度通期の業績予想は、売上高は前年比9.6%減の2兆1000億円、営業利益は100億円、経常利益は1000億円、最終利益は50億円を見込んでいる。
呉氏は、中期経営計画について「まずは黒字化が最重要事項だ。2024年度はブランド事業に集中した事業構造を確立し、『負のサイクル』からの脱却を目指す。2025年度以降は、既存ブランド事業と新産業による『正のサイクル』を創出し、飛躍的な成長を目指す。また、AI/次世代通信、EV(電気自動車)を中心に、鴻海精密工業との連携を強化して次世代技術の開発を目指す」と語った。
液晶パネル事業は縮小方針も、「撤退」は否定
決算発表後、複数の媒体が「シャープが液晶パネル生産から撤退」と報じた。これについて、シャープ広報はEE Times Japanに対し、「液晶パネルの生産から撤退するという事実はない」と語った。SDP以外の大型液晶ディスプレイパネル工場の方針について「現時点で発表できることはない」とし、中小型液晶ディスプレイパネルについても、亀山第二工場と三重第三工場では減産するものの、亀山第一工場や三重第二工場では現状の生産活動を継続すると説明した。「今後も市場動向や需要に合わせて、適正な規模での生産活動を行う方針だ」(広報担当者)
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