Power Integrationsが縦型GaN新興メーカーの資産を買収:高耐圧GaNの技術を獲得へ
Power Integrationsが縦型GaNパワー半導体を手掛ける米国の新興メーカーOdyssey Semiconductor Technologies(以下、Odyssey)の資産を買収する。2024年7月に完了する見込みで、その後、Odysseyの主要従業員全員がPower Integrationsの技術組織に移籍する予定だ。
Power Integrations(以下、PI)は2024年5月7日(米国時間)、縦型GaN(窒化ガリウム)パワー半導体を手掛ける米国の新興メーカーOdyssey Semiconductor Technologies(以下、Odyssey)の資産を買収する契約を締結したと発表した。同年7月に完了する見込みで、その後、Odysseyの主要従業員全員がPIの技術組織に移籍する予定だという。
Odyssey、「全資産を952万米ドルで売却」と発表
Odysseyは米国ニューヨーク州イサカに本拠を置く、2019年設立のパワー半導体メーカーだ。同社は、アプリケーション電圧を1000〜1万V以上に拡張できるという独自のGaNプロセス技術を用いた縦型GaNデバイスを開発。2022年9月には縦型GaN FETで定格電圧1200Vを実現したと発表し、650V、1200Vの縦型GaNパワーデバイスのサンプル提供を進めていたが、2024年3月、実質的に全資産を『大手半導体企業』※)に952万米ドルで売却する契約を締結したことを発表した。同社は同取引後、操業を停止する予定としている。
Odysseyの共同創業者兼CEO(最高経営責任者)であるRichard Brown氏は「Odysseyチームと私は、PIに加わりGaN技術ロードマップを加速できることをうれしく思っている。高電圧GaNを商品化した最初の企業として、PIはコスト、電圧、電流の面で技術を前進させ、GaNの能力を最大限に活用するシステムレベル製品の設計においても業界をリードし続けている」などと述べている。
※)発表時点では20日間の「Go-Shop」期間中は買い手の名を非公開としていた。
独自技術「PowiGaN」の開発を強化
PIは今回の買収について、独自技術「PowiGaN」について実行中の開発ロードマップを支援するものだと説明している。同技術は「InnoSwitch IC」や「HiperPFS-5」力率改善IC、シングルステージの複数出力IC「InnoMux-2」ファミリーなど、多くの自社製品ファミリーで採用されている。PIはまた、2023年に900Vおよび1250Vに対応するPowiGaN技術および製品も投入している。
PIの技術担当バイスプレジデントであるRadu Barsan氏は、「当社の目標は、SiC(炭化ケイ素)よりもGaNが持つ基本的な材料上の利点を生かして、現在SiCが対応している高電力アプリケーションを、はるかに低コストで高性能にサポートする、コスト効率の高い高電流および高電圧GaN技術を商品化することだ。大電流の縦型GaNにおけるOdysseyチームの経験は、これらの取り組みを強化し、加速させるものだ」などとコメントしている。
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