低入力オフセット電圧の超小型CMOSオペアンプ サイズは従来比7割減:ロームが開発、量産を開始
ロームは、低入力オフセット電圧と低ノイズを実現したCMOSオペアンプ「TLR377GYZ」を開発し量産を始めた。小型パッケージのWLCSPを採用しており、スマートフォンやIoT(モノのインターネット)機器のセンシング用途に向ける。
ボールピッチ0.5mm品に比べ、実装面積を約69%削減
ロームは2024年5月30日、低入力オフセット電圧と低ノイズを実現したCMOSオペアンプ「TLR377GYZ」を開発し量産を始めた。小型パッケージのWLCSPを採用しており、省スペースが求められるスマートフォンやIoT(モノのインターネット)機器のセンシング用途に向ける。
スマートフォンなどでは、センサーで検知/計測した温度や圧力、流量などの微小な信号を増幅するために、オペアンプが用いられる。ところが、トランジスタ素子のサイズが小さくなると、入力オフセット電圧やノイズの発生により、増幅の精度が低下することもあった。
そこでロームは、オフセット電圧を補正する回路を独自に開発して組み込むことにより、最大1mVという低入力オフセット電圧を実現した。また、定常的に発生するフリッカーノイズの改善と、抵抗成分を素子レベルから見直すことで、入力換算雑音電圧密度12nV/√Hzを達成した。
さらに、オペアンプの動作をセンシング時に限定するシャットダウン機能を搭載、待機時の回路電流を最大1.5μAに抑えた。電源電圧は1.8〜5.5V、動作温度範囲は−20〜85℃である。
パッケージはボールピッチが0.3mmのWLCSPを採用した。外形寸法は0.88×0.58mmである。これにより、基板への実装面積はボールピッチが0.5mm品(1.565×1.057mm)に比べ約69%も削減でき、同じく0.35mm品(1.308×0.727mm)と比べ約46%の削減が可能になった。
TLR377GYZのサンプル価格は220円(税抜き)。ネット商社のチップワンストップやコアスタッフオンラインなどから購入することができる。SSOP6用基板に実装してTLR377GYZを評価できる「CSP-SSOP変換基板」も用意した。なお、検証用シミュレーションモデルとして、高精度SPICEモデル「ROHM Real Model」を提供。ロームの公式ウェブサイトより入手することが可能である。
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