GaNの「光り方」で品質が分かる? 大阪大らが新たな評価法を開発:GaNデバイスの信頼性向上に寄与
大阪大学と住友化学は、炭素濃度が異なる複数の高純度GaN(窒化ガリウム)結晶について、全方位フォトルミネッセンス(ODPL)法を用い発光効率を測定した。GaNは含まれる炭素の割合が少ないほど、よく光る。しかし、炭素濃度が2.5億分の1以下では、「光りにくさ」の主な理由が炭素ではなく、「原子空孔」に変わることが分かった。
炭素濃度が8.8億分の1以下というGaN結晶でも計測可能
大阪大学と住友化学は2024年6月、炭素濃度が異なる複数の高純度GaN(窒化ガリウム)結晶について、全方位フォトルミネッセンス(ODPL)法を用い発光効率を測定した。GaNは含まれる炭素の割合が少ないほど、よく光る。しかし、炭素濃度が2.5億分の1以下では、「光りにくさ」の主な理由が炭素ではなく、「原子空孔」に変わることが分かった。
GaNデバイスの性能を低下させる結晶欠陥の1つとして「炭素不純物」がある。GaN中に炭素が混入すると、GaNは「光りにくく」なるという。炭素不純物の濃度が低い場合でも、性能は低下する。そこで今回はODPL法を応用し、高純度(低炭素濃度)GaNにおける炭素不純物を、高感度かつ非破壊、非接触で検出することにした。
この結果、炭素を含む割合が数億分の1(炭素濃度は1014cm-3台前半)で変化しても、発光効率は高い感度で変化することが分かった。また、炭素濃度と非発光性再結合頻度の関係により、炭素を含む割合が2.5億分の1(炭素濃度は3.5×1014cm-3)以下では、GaNにおける非発光(光りにくさ)の主な理由が炭素ではなく、原子空孔になることが判明したという。
なお、ODPL法を用いると、炭素濃度が8.8億分の1以下という住友化学製の高純度GaN結晶であっても、炭素濃度を計測できるという。
今回の研究は、大阪大学大学院工学研究科の佐野昂志大学院生(博士前期課程)や市川修平准教授、小島一信教授が、住友化学の藤倉序章氏、今野泰一郎氏、金木奨太氏らと協力して行った。
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