ニュース
大阪大、赤外光で発電する透明な太陽電池を開発:窓ガラスに設置、街全体を発電所に
大阪大学産業科学研究所の坂本雅典教授らによる研究グループは、赤外光を高い効率で化学エネルギーに変換する技術を開発、赤外域の太陽光で発電する透明な太陽電池の開発にも成功した。
赤外光を選択的に捕集、高い効率で化学エネルギーに変換
大阪大学産業科学研究所の坂本雅典教授らによる研究グループは2024年5月、赤外光を高い効率で化学エネルギーに変換する技術を開発、赤外域の太陽光で発電する透明な太陽電池の開発にも成功したと発表した。
地表に到達する全太陽光の約半分は赤外光である。ところが、赤外光を捕集して電気・化学エネルギーに変換し有効活用することは極めて難しく、未利用のエネルギー資源となっていた。
研究グループはこれまで、赤外域の光を選択的に捕集し、エネルギーに変換する技術(局在表面プラズモン共鳴を示すヘビードープ半導体ナノ粒子による赤外光―エネルギー変換)の開発に取り組んできた。
そして今回、高い効率で赤外光を化学エネルギーへ変換することに成功した。さらに、赤外域の太陽光で発電する透明な太陽電池も開発した。これを住宅やビルの窓ガラスなどに設置すれば、街全体を発電所にすることも可能となる。
研究室の成果を事業化するため、大学発スタートアップの「OPTMASS」を設立し、赤外光を有効利用した「発電する窓ガラス」の開発と社会実装を目指す。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 大阪大ら、反強磁性体のスピン方向を電圧で制御
大阪大学や名古屋大学、三重大学、関西学院大学および、高輝度光科学研究センターの研究グループは、反強磁性体であるクロム酸化物薄膜を用い、スピンの向きを電圧で制御することに成功した。制御効率は従来の強磁性体に比べ50倍以上も高いことを確認した。 - グラフェンの層間にアルカリ金属を高密度に挿入
産業技術総合研究所(産総研)と大阪大学、東京工芸大学、九州大学および、台湾国立清華大学の研究グループは、グラフェンの層間にアルカリ金属を高い密度で挿入する技術を開発した。電極材料としてアルカリ金属を2層に挿入したグラフェンを積層して用いれば、アルカリイオン二次電池の大容量化が可能になるという。 - 広帯域光に対応、柔軟なシート型光センサー開発
大阪大学と中央大学の研究グループは、長波長赤外光を含む広帯域光を検出でき、柔軟性も備えた「シート型光センサー」を開発した。 - 熱電材料の発電能力を大幅向上、AlGaAs/GaAs界面の2DEGを用い 大阪大ら
大阪大学と物質・材料研究機構(NIMS)は、AlGaAs/GaAs界面の二次元電子ガス(2DEG)を用いて、熱電材料の発電能力を大幅に向上させることに成功した。熱電変換出力因子の増大率は、従来の2DEGに比べ4倍となる。 - シリコンナノ共振器構造で新たな共鳴モード発見
大阪大学は、台湾大学や済南大学との共同研究で、シリコンナノ共振器構造の「ミー共鳴モード」を制御するための新たな方法を発見した。 - 大阪公立大ら、有害物質から有用な化合物を合成
大阪公立大学と大阪大学の共同研究グループは、「パーフルオロアルケン」から、「含窒素ヘテロ環カルベン(NHC)」と呼ばれる、窒素が結合した一重項カルベンを含む環状化合物を、簡便に合成する手法を開発した。