チップレット設計期間をどう短縮するのか 米新興が提案:モジュール式プラットフォーム(2/2 ページ)
チップレットへの注目度が高まるにつれて、チップレット設計における課題も出てきた。米国のスタートアップBaya Systemsは、そうした課題に応えるソリューションを明らかにした。
「モジュール化」で再利用を促進
Nayampally氏は、「チップレットは最終的に、システムのニーズに応じて高度にカスタマイズされるが、特にAIの時代における当社の目標は、アーキテクチャの観点から実装に至るまでのチップレットのワークフローをサポートするモジュール式のツールセットを提供することだ。EDAベンダーはその一部を備えているが、多くはまだ用意されていない」と述べている。
Bayaのプラットフォームはモジュール式であるため、顧客がチップレットアーキテクチャの構築に同プラットフォームを使用すればするほど、要素を再利用して設計と展開をスピードアップできるという。
同氏は、「このプラットフォームは将来性があり、マルチチップレットやパッケージに対応しているが、ほとんどの顧客はまだそこに到達していない」と付け加えた。
チップレットは新しい概念ではないが、ここ数年、半導体メーカーが「ムーアの法則」の物理的限界に対抗するためにチップレットに注目しており、解決すべき新たな課題が生まれている。
米国の半導体市場調査会社であるObjective Analysisの主席アナリストを務めるJim Handy氏によると、チップレットの概念は、1980年代のマルチチップモジュール(MCM)にさかのぼるが、他の構成ではさらに以前から存在していたという。Xilinxは、約6年前にチップレットを製造環境に導入している。同氏はEE Timesに対し、「このアイデアは大きな反響を呼び、主要プロセッサメーカーはサーバプロセッサの有効ダイサイズを拡張するためにこのアプローチを採用している。こうした取り組みにより、歩留まりと製造可能性が向上してコストが削減され、同アプローチをますます幅広い用途に使用できるようになると予想される」と述べている。
チップレット設計の簡易化を目指すスタートアップ
チップレット展開の簡易化を目指しているスタートアップはBayaだけではない。米スタートアップEliyanの高性能チップレット相互接続は、標準的な有機基板上で同種および異種アーキテクチャを接続するコスト効率の高い方法に対する重要なニーズに対応している。同社の「Bunch of Wires(BoW)」チップレットシステムは、高度なパッケージング技術を使用したダイツーダイの実装と同等の帯域幅と電力効率、レイテンシを実現できる。
過去5年間のチップレットの普及によって、ベストプラクティスの需要が高まり、正式な規格の開発につながった。「Universal Chiplet Interconnect Express(UCIe) 1.0」仕様は、2022 年春にリリースされた。同仕様は、ダイツーダイI/O物理層、ダイツーダイプロトコル、業界標準規格である「PCI Express(PCIe)」および「Compute Express Link(CXL)」を活用したソフトウェアスタックモデルをカバーしている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「チップレット構想」は破綻してないか? 利点はどこに
昨今、盛り上がっている「チップレット」だが、最近の発表を聞いているとどうにも違和感を覚えてならない。IntelやAMDの製品を取り上げながら、当初提唱されていたチップレットの利点について、もう一度考えてみたい。 - アオイ電子、シャープ三重工場で先端パネルパッケージ生産へ 26年稼働
アオイ電子とシャープは2024年7月9日、シャープ三重事業所に半導体先端パネルパッケージの生産ラインを構築すると発表した。アオイ電子の「FOLP(Fan-out Laminate Package)」を生産する予定で、2026年中の本格稼働を目指す。本格稼働時の生産能力は月産2万枚を予定している。 - RapidusとIBM、2nm世代半導体のチップレットパッケージ技術で協業へ
RapidusとIBMは2024年6月4日、2nm世代半導体のチップレットパッケージ量産技術確立に向けたパートナーシップを締結したことを発表した。RapidusはIBMから高性能半導体向けのパッケージ技術の提供を受け、技術確立の協業を進める。 - 豊富な製品群とオープンソースの活用で「AIの民主化」を進めるAMD
日本AMDは2024年4月に都内で記者説明会を開催。AMDでプレジデントを務めるVictor Peng氏が、エッジAI(人工知能)向けの製品やAMDの強みなどについて語った。 - 中国政府の「Intel/AMD禁止令」、中国企業への強い追い風に
中国政府は2024年3月、政府機関向けのPCやサーバにIntelとAMDのCPUを使用することを使用することを禁じるガイドラインを発表したという。この措置は、Intel/AMDの競合にあたるHygon Information Technologyのような中国企業の売り上げ拡大を後押しするとアナリストらは指摘している。 - IntelとAMDのチップ戦略が「逆転」? 最新Core UltraとRyzenを分解
今回は、IntelとAMDのモバイル向けCPUの新製品を分解する。Intelの「Core Ultra」(Meteor Lake世代)はチップレット構成、AMDの「Ryzen 8000G」(Zen 4世代)はシングルシリコンになっていて、両社のこれまでの傾向が“逆転”している。