長期保管した半導体や、古いデートコード品は使えるのか?(前編):半導体製品のライフサイクルに関する考察(8)(4/4 ページ)
コロナ禍を経て、半導体製品の安定確保がより重視されるようになっている。そうした中、同じ半導体製品を使い続けるためには、自社での保管を含め、在庫を長期間保管しなければならない状況が発生する。今回は半導体製品の長期保管に焦点を当て、その懸念点について前後編の2回で検証する。
リードフレームの変色がもたらすもの
リードフレーム部分が酸化する原因や影響についても、ウィスカと同様に古くから議論されているが、明確な対策が見つかっていない。
半導体製造メーカーのサポートページなどを見ても、納入された半導体製品のリードが酸化していたという報告が上がっていることが確認できる。つまり、少々乱暴な言い方にはなるが、「半導体のリードフレームの酸化は、保管期間に関係なく発生する可能性がある」と言えないだろうか。
半導体リードフレームの酸化に関して、半導体製品を販売している企業では、以下のような見解を示している。
- 酸化の根本原因
- 半導体製品の多くは、リードフレームが銅でできており、リードフレームの表面には薄いスズが電気メッキされている。
- 半導体製品を長時間空気にさらすと、リード部分が空気中の酸素によって酸化される。
- リード部分は空気中の酸素を吸収して酸素皮膜を生成するため、リフローなどで酸化皮膜が高温で加熱されるとスズが再付着しにくくなる。
- 酸化防止処置:
- 製品が長時間空気に触れないようにする。
- 防湿袋(moisture barrier bag、MBB)内に梱包する。
- 防湿袋内に規定量の乾燥剤とHIC(Humidity Indicator Card:湿度表示カード)を同梱する。
このような対策をしても酸化する場合もある。対象となる半導体製品の代替がなく、その製品を使わざるを得ない場合は、酸化を除去する方法が取られる。その際には、酸化膜除去も可能な洗浄剤を使用するなどして対応する。
いずれにしろ、リードフレームの酸化も、懸念点として考慮すべき項目ではあるが、先に話したように、長期保管だけが原因ではないことをご理解いただきたい。
最後に
民生用アプリケーションでは、多くの製品の耐用年数が制限されていて、その市場に製品を提供する企業では製品のライフサイクルを短縮する方向に進んでいる。一方で、産業、自動車、医療、航空宇宙、及び防衛などの分野では、半導体製品に対してより長いライフサイクルが要求されていて、30年以上のライフサイクルを要求される場合も少なくない。その結果、アプリケーションのライフサイクルを維持するためには継続的な部品供給が不可欠となり、多くの半導体製品において製造中止後も長期間の保管が求められている。
半導体製品の長期保管が必要な場合、適切な条件下で保管された半導体製品が市場において信頼できるものであると、顧客が確信できることが重要だ。加えて、継続供給性やシステムの長期的な可用性を確保するために豊富な製品在庫を持ち、付加価値となるサービスや製造ソリューションを提供しているパートナーとの協力も重要になる。
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