熱に関する基礎知識:福田昭のデバイス通信(468) AIサーバの放熱技術(1)(2/2 ページ)
「Hot Chips 2024」の技術講座(チュートリアル)のテーマは放熱技術だった。CPU/GPUの消費電力が増加し、サーバやデータセンターの放熱技術に対する注目が集まっているからだ。本シリーズでは、Hot Chips 2024の技術講座などをベースに、最新の放熱技術を解説する。
熱の伝わり方と伝熱媒体の有無
続いて、熱移動の「経路」を説明しよう。熱の伝わり方(伝熱)に3通りの経路があることは、良く知られている。「伝導」「対流」「放射」だ。ただし「伝導」は電気伝導や超伝導など、「放射」は粒子線や重力波、電磁放射などでも用語として使われる。そこで区別のために「熱伝導」「熱放射」と呼称することが少なくない。
「伝導(熱伝導)」は通常、温度の異なる固体が接触したり、固体の一部で温度差が生じたりして起こる。固体を構成する原子は格子状に配列しており、個々に振動している。この振動エネルギー(格子振動エネルギー)の大小が温度の高低を生む。格子振動のエネルギーが高温部から低温部に伝わることで、熱が移動する。
「対流」は、温度の異なる気体あるいは液体の間で起こる。気体分子(気体原子を含む)あるいは液体分子(液体原子を含む)の運動エネルギーの大小が、温度の高低となる。高温部が流動して低温部と混ざることで、熱が移動する。なお高温の気体あるいは液体は軽く、低温の気体あるいは液体は重い。このため高温部が下、低温部が上にあると対流が起こりやすい。
「放射(熱放射)」は固体がその温度に応じて電磁波を放射することによって発生する。熱放射が起きると放射源の固体は温度が下がる。熱放射を受けた固体は温度が上がる。熱放射は熱移動に媒体を必要とせず、真空中でも起こる。
熱放射の最も身近な例は太陽による熱放射である。太陽の表面温度は約6000K(ケルビン)と極めて高い。太陽から放射された熱(電磁波)を地球が受け取ることで、生物が生存可能な温度環境が維持されている。
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