連載
ラックサーバのデータセンターを支える空冷技術:福田昭のデバイス通信(471) AIサーバの放熱技術(4)(2/2 ページ)
データセンターの放熱/冷却システムの詳細を解説する。まずは空冷方式を取り上げる。
空調機から冷却塔までの短くない道のり
そして放熱システムは、空調機で完了というわけではない。まだ先がある。空調機で空気を冷やすためには通常、冷却水が使われる。例えば空調機(CRAC)が13℃の冷気をサーバに送り、22℃に温められた空気を受け取るとする。空調機は空気を22℃から13℃に冷やすために、冷却水を使う。
例えば7℃の冷却水をCRACは受け取り、空気を冷やす代わりに冷却水を13℃に温める。温められた水はポンプによって冷却水循環器(チラー:Chiller)に送られ、チラーで7℃に冷やされる。そして冷却水はチラーからCRACへと送られる。
空調機(CRAC)を利用してサーバを冷却する放熱システムのフロー(模式図)。左上から左下へ、サーバラック、ファン、CRAC、ポンプ、チラー(冷却水循環器)、ポンプ、冷却塔と続く[クリックで拡大] 出所:Super Micro Computer(Supermicro)が国際学会Hot Chips 2024のチュートリアルで講義した「Thermal Techniques for Data Center Compute Density」のスライドから
一方、チラーが送出する冷却水の温度を7℃に維持するために、別の冷却水(二次冷却水)がポンプによってチラーから冷却塔(Cooling Tower)に送られる。二次冷却水(水蒸気が凝縮した水)は当初、35℃とかなり高い温度になっている。冷却塔では大気中に熱を放出することによって二次冷却水の温度を29℃に下げてから、チラーに送り返す。
上記のように、放熱・冷却システムも電力を消費する。主要な消費源は、「サーバに空気を送るファン」「空調機(CRAC)」「チラー(冷却水循環器)」だ。特にチラーは効率が低く、無駄な電力消費が大きい。
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