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300mm GaNウエハー技術、Infineon本社で詳細を聞く25年中にサンプル出荷へ

Infineon Technologiesが「世界初の300mm GaNウエハー技術」(同社)を開発した。今回、EE Times Japan記者がドイツ・ノイビーベルクのInfineon本社を訪れ、その概要を聞いた。

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 Infineon Technologies(以下、Infineon)は2024年9月17日(ドイツ時間)、ドイツ・ノイビーベルクの本社において専門メディア向けの説明会を実施。パワー&センサーシステムズ(PSS)事業部プレジデントを務めるAdam White氏が、最近発表した300mm GaN(窒化ガリウム)ウエハー技術の概要を語った。

Infineonが開発した300mm GaNウエハー
Infineonが開発した300mm GaNウエハー[クリックで拡大]

シリコン並みのコストパリティ実現へ

 Infineonは2024年9月11日、「世界初」(同社)となる300mmのGaNウエハー技術を開発したと発表した。

 White氏は、「300mm GaNウエハー技術は非常に大きな意味をもつ。なぜなら、これによって規模の経済へ移行する転換点を迎え、最終的にはGaNがシリコンと同等のコストパリティを実現できると確信しているからだ」と強調。300mmウエハーでのチップ製造は、200mmウエハーの場合と比べ、ウエハー1枚当たり約2.3倍のチップが製造可能となり、費用対効果が高まる。フルスケールでの300mm GaNウエハー生産では、オン抵抗レベルでシリコンと同等のコストパリティが実現可能だという。

 最先端の300mm製造プロセスによるデバイス性能の向上によって「効率性能、小型化、軽量化、総コストの低減など、最終顧客のシステムにおいても大きなメリットがある」としている。

 同社は、オーストリア・フィラッハ工場にある、既存300mmシリコンウエハー製造ラインに統合したパイロットラインで、300mm GaNウエハー生産に成功。今後、市場のニーズに応じ、同工場において300mm GaNウエハーでのパワーデバイス生産を商業化していく方針だという。White氏は「既存のフットプリントを使用しているという点だけでも、大きな差別化要素になる」と強調。既存インフラの活用によって資本効率を最大化し、GaN技術の実装を加速する。将来的に市場の需要に応じて迅速に生産能力を増強することも可能だとしている。

膨大な研究開発費投じて『エピのレシピ』を極めた

 Infineonが手掛けるのは、シリコンウエハー上にGaNをエピタキシャル成長させたGaN on シリコン技術だ。GaNとシリコンとでは格子定数および熱膨張係数が大きく異なるため応力が生じ、ウエハーに反りが生じるなどの課題がある。そしてこの課題はウエハーサイズが大きくなるほど深刻になる。White氏は、「シリコン基板上に均質なGaNのエピ層を形成するのは非常に困難だ」と説明。「300mm GaNウエハーでは、1セントコインの上に、それぞれが5トンの重さのゾウが4頭乗っている場合に匹敵する応力を管理する必要がある」とその難易度の高さを表現していた。

Infineonのパワー&センサーシステムズ(PSS)事業部プレジデントを務めるAdam White氏
Infineonのパワー&センサーシステムズ(PSS)事業部プレジデントを務めるAdam White氏[クリックで拡大]

 今回、同社はこの課題を克服し、300mm ウエハー上でのGaN層の成長を実現したとしている。なお、具体的な技術については「非常に重要な差別化要素だ」として明かさなかったが、White氏は、「300mmシリコンウエハーについては業界内で成熟したものだが、Infineonは300mm薄型ウエハー技術のパイオニアであり、これは当社のDNAの一部といえる。その後、長年にわたり膨大な研究開発費を投じてエピの『レシピ』を極めるため努力してきた」と説明。また「GaN on シリコンにおけるエピは非常に困難だが、当社はエピの他、アプリケーション、製品などに関する350件以上の特許ファミリーを構築してきた」とも強調した。

 なお、300mm GaNウエハーでの量産時期などについては明言はしなかったが、2025年第4四半期にもサンプル提供を開始する予定だと明かした。生産規模や投資計画についても具体的には語らなかったが、White氏は「フィラッハ工場には柔軟性がある。現在既に必要な規模は確保しているが、さらに必要になった場合も対応可能だ。かつて300mmシリコンウエハーの際は、需要動向に応じて能力を拡大していった。GaNについても同様だ」と説明していた。

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