村田製作所がポーラス集電体を開発、出力最大4倍に:リチウムイオン二次電池向け
村田製作所は、リチウムイオン二次電池において従来比で最大4倍の出力を実現する「ポーラス集電体(PCC)」を、スタンフォード大学と共同開発したと発表した。村田製作所は今後、リチウムイオン二次電池へ実装するための技術開発に取り組む。
充電時間も最短で4分の1に短縮、軽量化も実現へ
村田製作所は2024年9月30日、リチウムイオン二次電池において従来比で最大4倍の出力を実現する「ポーラス集電体(PCC)」を、スタンフォード大学と共同開発したと発表した。村田製作所は今後、リチウムイオン二次電池へ実装するための技術開発に取り組む。
従来のリチウムイオン二次電池では、容量を増やすために電極を厚くすると、リチウムイオンが電極内を移動する距離が長くなって抵抗が増え、電池の出力が低下するという課題があった。
そこで今回、リチウムイオンの移動距離を従来の半分に短縮できる技術を開発した。これにより、リチウムイオンの通り道が新たに生まれ、抵抗値が半分となり2倍の電流を流せるようになった。この結果、従来の集電体を用いた場合に比べ、最大で4倍の出力を発生させることが可能になった。充電時間も最短で4分の1に短縮できるという。
また、集電体にアルミニウム箔や銅箔を用いた従来のリチウムイオン二次電池に比べ、軽くできる。さらに、集電体の一部に樹脂を用いているため、ショートしても熱暴走しにくく電池の安全性が高い。しかも、PCCは「円筒型」や「積層型」など、いずれのリチウムイオン二次電池にも適用可能である。
PCCを採用したリチウムイオン二次電池は、大容量化するほど優れた効果が得られる。このため、電動工具や電気自動車(EV)をはじめ、高出力が必要となる大型バスやトラック、飛行体などの電動化にも適しているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 極小PTCサーミスターに検知温度105℃/115℃品を追加
村田製作所は、モバイル機器向けおよび車載向けに、0603Mサイズ(0.6×0.3×0.3mm)の過熱検知用PTCサーミスターのラインアップを拡充した。抵抗1kΩシリーズに検知温度105℃/115℃の製品を追加した。 - 体積75%減の「世界最小」MLCCを開発、村田製作所
村田製作所は2024年9月19日、016008Mサイズ(0.16×0.08×0.08mm)の積層セラミックコンデンサーを「世界で初めて」(同社)開発したと発表した。現行の最小品である0201Mサイズ(0.25×0.125mm)と比較して体積比で約75%小型化している。 - 村田製作所、アンテナ間干渉改善デバイスを開発
村田製作所は、スマートフォンなどにおいて無線通信機能を安定させることができるアンテナ間干渉改善デバイス「Radisol(ラディソル)」を開発し、量産を始めた。 - 手作業のミス防止へ エッジAIカメラでリアルタイム解析
村田製作所は「TECHNO-FRONTIER 2024」にて、AI(人工知能)演算機能を搭載したカメラによる工程管理ソリューションを展示した。製造業における手作業の工程をリアルタイムで解析することで、ミス防止や作業スピード向上が期待できるという。 - 1608Mサイズで静電容量が最大100μFの積層セラコン
村田製作所は、外形寸法が1.6×0.8×0.8mm(1608Mサイズ)で最大静電容量100μFを実現した積層セラミックコンデンサーを開発した。最大105℃の高温環境下でも使用できる。AIサーバやデータセンター向け機器、民生機器など幅広い用途に向ける。 - 再エネ制御ソリューション、村田製作所が外販
村田製作所は、独自に開発した統合型再エネ制御ソリューション「efinnos(エフィノス)」の外販を始める。AI(人工知能)技術を活用し太陽光発電と蓄電池のシステムを適切に制御する。これにより、製造拠点などにおける再生可能エネルギー自給率の最大化が可能となる。