−40〜125℃で高精度を維持、車載用水晶振動子:村田製作所が量産開始
村田製作所は、車載ネットワークに向けた水晶振動子「HCR/XRCGE_M_Fシリーズ」を開発、量産を始めた。−40〜125℃の広い使用温度範囲で周波数偏差±40ppmという高い精度を実現した。
独自の水晶原石を用い振動子の設計を最適化
村田製作所は2024年11月、車載ネットワークに向けた水晶振動子「HCR/XRCGE_M_Fシリーズ」を開発、量産を始めた。−40〜125℃の広い使用温度範囲で周波数偏差±40ppmという高い精度を実現した。
自動車では、タイヤの空気圧などを無線伝送する「TPMS」や、無線で車のドアを開錠する「RKE」、無線でバッテリーの状態を管理する「wBMS」など、さまざまなシステムで、Bluetooth Low Energy(BLE)やZigBeeといった通信規格が利用されるようになった。こうした環境では、IC間の通信エラーを防ぐため、搭載機器のIC間で信号送信タイミングを正確に同期させる必要があるという。
ただ、一般的な水晶発振子では、周波数精度に個体差があったり、搭載した機器の動作温度環境によって周波数が変化したりするなど課題があった。これを回避するため、車載機器の生産過程では、無線制御ICに補正係数を書き込むなど、新たな作業を行うこともあった。
HCR/XRCGE_M_Fシリーズは、こうした課題を解決した。独自の水晶原石を用い振動子の設計を最適化することで、極めて広い使用温度範囲に対応しながら、高い精度を実現した。これまでのようにキャリブレーションの作業を行う必要もないという。また、独自の樹脂封止パッケージにより、有機系異物に加え、無機系異物のスクリーニングも可能となり、高い信頼性と低故障率を実現した。
HCR/XRCGE_M_Fシリーズの主な仕様は外形寸法が2.0×1.6×0.65mm、周波数は32M〜48MHz(BLE対応製品)。等価直列抵抗(ESR)は60〜100Ω、負荷容量は6p〜10pFとなっている。
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