「生きた電極材料」でダイオードの性能を向上:電極構造を温度制御により変える
大阪大学は、高品質の二酸化バナジウムを電極としてシリコン基板に組み込み、温度制御によって電極構造を変えることができるダイオードを開発した。このデバイスはテラヘルツ光の検出器として、最大10倍以上も性能を向上させたという。
サブミクロンサイズのVO2を電極としてSi基板に組み込む
大阪大学は2024年2月、高品質の二酸化バナジウム(VO2)を電極としてシリコン(Si)基板に組み込み、温度制御によって電極構造を変えることができるダイオードを開発したと発表した。このデバイスはテラヘルツ光の検出器として、最大10倍以上も性能を向上させたという。
VO2は、温度や電場が外部から加わると「性質が絶縁体から金属に変わる」特性を持つ材料である。デバイスの内部にVO2を組み込んでおけば、電場を局所的に増強でき、高速で効率的な動作が可能となる。
研究グループは今回、独自の基板加工技術や結晶成長技術を用い、金属ドメインのサイズが従来の10倍以上というVO2を作製できるようにした。そして「生きた電極」を持つSiダイオードを開発した。触媒作用を持つ研磨板による表面処理法を採用したことにより、極めて平たんな基板表面を実現でき、金属ドメインのサイズ拡大につながったという。
研究グループは産業科学研究所付属量子ビーム科学研究施設内で、試作したデバイスを評価した。DC電場に加え、テラヘルツ光を新たに照射した。そうすると、VO2電極間のSi基板内で、キャリアの増幅と電流生成は強く起こり、光検出機能を持つダイオード特性を確認できたという。
今回の研究成果は、大阪大学産業科学研究所の大坂藍招へい教員(兵庫県立大学大学院電子情報工学専攻助教)、服部梓招へい准教授、田中秀和教授、同大学院基礎工学研究科の永井正也准教授らによるものである。
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