怒涛の勢いで進化を続ける「スマートウォッチ」:福田昭のデバイス通信(488) 2024年度版実装技術ロードマップ(8)(2/2 ページ)
今回は「2.2.1.4 ウェアラブルデバイス、ウェアラブル用電源の動向」の概要を紹介する。ウェアラブルデバイスの中でも進化が速い「スマートウォッチ」に注目し、Appleのスマートウォッチ「Apple Watch Series 7/Series 8/Series 9」の仕様を比較している。
スマートウォッチ「Apple Watch Series 7〜Series 9」の仕様を比較
一般消費者用に限ると、カメラや腕時計、活動量計などをウェアラブルデバイスにした製品が数多く存在する。なお、日本国内では総務省が発表している「令和4年通信利用動向の調査」によると、2022年(令和4年)の世帯普及率はスマートフォンが90.1%、タブレットが40.0%、ウェアラブルデバイスが10.0%となっている。ウェアラブルデバイスが普及する余地は大きい。
業務用では医療・警備・災害救助の活動を支援するデバイス、従業員の作業や環境などをモニタリングするデバイスが実用化されている。
2024年度版の実装技術ロードマップ(本ロードマップ)では、ウェアラブルデバイスの中でも進化が速い「スマートウォッチ(腕時計型ウェアラブルデバイス)」に注目した。スマートウォッチが備える時計以外の一般的な機能には、健康管理(歩数計、消費カロリー計、心拍計、睡眠計、体脂肪率計など)、通知(電子メールやSNSの着信、受信メッセージの通知表示、返信など)、電子マネー決済、音楽再生・保存、写真撮影、音声操作、音声アシスタント、位置情報(GPS、電子コンパスなど)、転倒・緊急通知などがある。
以下は、スマートウォッチの最大手ベンダーであるAppleの「Apple Watch」シリーズについて、最近のモデルを比較した。Appleは2015年4月に最初の製品「Series 1」を発売した後に、モデルチェンジを毎年、繰り返してきた。ここでは2021年に発売された「Series 7」、2022年に発売された「Series 8」、2023年に発売された「Series 9」を取り上げる。
外形寸法は41mm×35mm×10.7mmと3つのシリーズで変わらない。重量も32g(Series 7)、31.9g(同8)、31.9g(同9)とほぼ同じである。ディスプレイの解像度も352×430画素で変わらない。
機能面でのSeries 7とSeries 8の違いは、手首皮膚温度センサー(Temperature Sensor)の搭載だろう。測定結果から女性の体温周期や排卵日を推定して通知する機能も備える。
Series 9では、プロセッサの性能を大幅に向上させた。「iPhone 14 Pro」や「iPhone 15」などに搭載されたプロセッサ「A16 Bionic」のカットダウン版である「S9プロセッサ」をSeries 9向けに開発した。Series 8のプロセッサ「S8」と比べてトランジスタ数は60%前後増加し(35億から56億に増加)、機械学習用ニューラルエンジンのコア数は2コアから4コアに倍増した。音声認識アシスタント「Siri」の応答時間が短くなり、タッチパネルはダブルタップ機能を備えた。
(次回に続く)
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