富岳を継承 富士通次世代プロセッサ「MONAKA」の詳細を聞く:データセンター/エッジでも(2/2 ページ)
富士通は、次世代データセンター向けの省電力プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」の開発に取り組んでいる。その特徴やターゲットアプリケーションについて、富士通 富士通研究所 先端技術開発本部 エグゼクティブディレクターの吉田利雄氏に聞いた。
基幹情報システムのノウハウを生かした信頼性
安全性/安定性/信頼性の高さも重視している。安全性については、ユーザーのバーチャルマシン(VM)を丸ごと暗号化してメモリデータを保護するConfidential Compute Architecture(CCA)を導入している。吉田氏は「日本の顧客にとっては『国産である』『富士通が直接データを保護する』ということも安心感につながるのではないか」と説明する。
安定性については、メモリ/キャッシュ分割機構によってVM間の性能干渉を防止し、リアルタイム性を担保している。信頼性については、基幹サーバRAS技術を取り入れた。「企業の基幹情報システムやスパコンを手掛けてきた富士通ならではの強みだ」(吉田氏)
AI処理にとどまらない適用領域
ソフトウェアは主にオープンソースを中心に開発している。開発スピードが速いためだが、品質を懸念する顧客もいることから、オープンソースコミュニティーやディストリビューターのサポートも行っているという。
AI処理向けのプロセッサではGPUに注目が集まっているが、MONAKAの適用領域はAI処理にはとどまらない。高性能コンピューティング(HPC)で処理するようなシミュレーションやデータ分析にも利用できるほか、ファクトリーオートメーション(FA)などのエッジ環境や「街中のビルで使ってもらうことも想定している」(吉田氏)という。
これまで富士通の製品は開発が完了してから発表する例が多かったというが、FUJITSU-MONAKAは開発段階から顧客に紹介し、フィードバックを受けている。吉田氏は「時に厳しいフィードバックももらいながら設計に反映し、より良いもの、より求められるものを作っていく。FUJITSU-MONAKAが京や富岳に続くような存在になればと思う」と語った。
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