全固体電池向けの固体電解質市場、2030年以降に急加速か:酸化物系は4022億円規模に拡大
富士経済は、全固体電池や半固体電池・疑似固体電池に用いられる「固体電解質」の世界市場を調査し、2045年までの予測を発表した。これによると、2045年の世界市場は硫化物系固体電解質が7553億円、酸化物系固体電解質が4022億円の規模に達すると予測した。
2030年以降はEVを中心に硫化物系全固体電池の採用が増加
富士経済は2025年6月、全固体電池や半固体電池・疑似固体電池に用いられる「固体電解質」の世界市場を調査し、2045年までの予測を発表した。これによると、2045年の世界市場は硫化物系固体電解質が7553億円、酸化物系固体電解質が4022億円の規模に達すると予測した。
硫化物系全固体電池は、EV向けで注目されているものの、本格的な実用化までは至っていない。このため、硫化物系固体電解質もサンプルや試験用の出荷にとどまっており、2025年の市場規模は91億円と小さい。自動車メーカーや電池メーカーは2027〜2030年にもEV向け硫化物系全固体電池の量産を始める計画であり、これを機に硫化物系固体電解質の市場も拡大する見通しである。
また、2030年以降は新たな正極・負極活物質の採用や、電池の高容量化、急速充電性能の向上など、硫化物系全固体電池の性能改善も予想される。こうしたことから、2045年には硫化物系固体電解質の市場規模が、7553億円に達すると予測した。
一方、酸化物系全固体電解質は、中国メーカーが疑似固体電池向けに量産を始めており、2025年は634億円の市場規模を見込む。2020年代半ばから後半にかけては、中国の電池メーカーが現地の電動バイクやEVなどに向け、疑似固体電池の実用化に乗り出す見通し。日系メーカーによる全固体電池の実用化も予想され、酸化物系全固体電解質市場は拡大する。2030年以降も、疑似固体電池の普及率向上や性能改善によって、酸化物系全固体電解質市場は拡大。2045年には4022億円の市場規模になると予測した。
なお、今回の調査は2025年4〜5月に行った。
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