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米国半導体の強化は100%関税よりIntel支援 ── 分社発表から1年、結論を急げ大山聡の業界スコープ(91)(3/3 ページ)

100%関税構想は米国企業の負担増と競争力低下を招く。半導体製造強化には、巨額赤字に陥るIntelの製造部門分社化に対する支援こそ急務だ。

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巨額赤字と先行き不透明な分社計画

 下図はIntelの四半期営業損益の推移である。


Intelの四半期営業損益推移[クリックで拡大] 出所:Intel決算資料を基にGrossberg作成

 直近の2025年4〜6月期は、Foundry(受託製造)部門だけで32億米ドルもの赤字を計上している。1年間で136億米ドル(1米ドル=150円換算で2兆400億円)という巨額赤字である。先日の決算発表時に、ドイツおよびポーランドへの工場進出を断念する、という発表があったが、18A/14Aといった最先端プロセスの開発や工場建設は手を緩めずに進めている。問題はこれらのプロセス開発や工場建設に巨額の投資を行っても有力顧客がつかないのではないか、という懸念がつきまとっている。

 これらの最先端プロセスは新会社にとって戦略商品になるはずである。誰が出資して誰が経営するのか、どのような経営方針を立てるのか。有力ファブレスメーカー数社が出資候補社として名前が挙がっているのはよいとして、TSMCの名前も挙がっているようだ。筆者としては「TSMCによるマジョリティー出資(傘下に収める)は米国政府が望まないだろう、しかしマイノリティー出資ではTSMCのメリットがない」と考えている。ただ、「20%出資を前提にした議論が継続している」という報道もある。「関税と引き換えにマイノリティー出資を」という米国政府からの要請もあり得るので、経済合理性だけでは話が進まないかもしれない。

 いずれにしてもトランプ政権は、不合理な100%関税の検討をしているヒマがあるのなら、Intelの製造部門をどのように支援するのか。TSMCへの協力要請の有無を含めて、こちらの結論を急ぐことをサポートすべきだろう。半導体市況の変化は速くて激しいのだ。一刻の猶予もないはずである。

連載「大山聡の業界スコープ」バックナンバー

筆者プロフィール

大山 聡(おおやま さとる)グロスバーグ合同会社 代表

 慶應義塾大学大学院にて管理工学を専攻し、工学修士号を取得。1985年に東京エレクトロン入社。セールスエンジニアを歴任し、1992年にデータクエスト(現ガートナー)に入社、半導体産業分析部でシニア・インダストリ・アナリストを歴任。

 1996年にBZW証券(現バークレイズ証券)に入社、証券アナリストとして日立製作所、東芝、三菱電機、NEC、富士通、ニコン、アドバンテスト、東京エレクトロン、ソニー、パナソニック、シャープ、三洋電機などの調査・分析を担当。1997年にABNアムロ証券に入社、2001年にはリーマンブラザーズ証券に入社、やはり証券アナリストとして上述企業の調査・分析を継続。1999年、2000年には産業エレクトロニクス部門の日経アナリストランキング4位にランクされた。2004年に富士通に入社、電子デバイス部門・経営戦略室・主席部長として、半導体部門の分社化などに関与した。

 2010年にアイサプライ(現Omdia)に入社、半導体および二次電池の調査・分析を担当した。

 2017年に調査およびコンサルティングを主務とするグロスバーグ合同会社を設立、現在に至る。


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