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室温動作の共鳴トンネルダイオードを試作IV族混晶半導体のみでDBSを形成(2/2 ページ)

名古屋大学は、IV族混晶半導体のみで高品質の二重障壁構造(DBS)を形成する技術を開発した。この技術を用い、テラヘルツ(THz)発振に必要な共鳴トンネルダイオード(RTD)を試作し、室温(300K)での動作実証に成功した。

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III-V族化合物半導体RTDに匹敵する特性を出せる可能性も

 さらに、試作したGeSn/GeSiSn DBSについて、エネルギーバンド構造と量子準位構造のシミュレーションを行った。これにより、GeSn井戸層中に第一量子準位と第二量子準位が形成されることを確認した。また、デバイス特性シミュレーター「TCAD」を用い、GeSn/GeSiSn DBSのJ-V特性についてシミュレーションした。この結果、NA(エミッタおよびコレクタ層の不純物濃度)が2×1018cm-3の時のJ-V特性からも、第一および第二量子準位に由来する2つのNDRが発現していることを確認できた。

 そこで、NDRが発現する電圧値について、NAとの依存性を調べた。これにより、第二量子準位はNAに対し1〜3Vの広い範囲で発現することが分かった。今回試作したGeSn/GeSiSn RTDは、NDRの発現位置が第二量子準位とほぼ合致しており、第二量子準位を介した共鳴トンネル電流によって動作しているとの見方を示した。

左はNA=1018cm-3におけるGeSn/GeSiSnのエネルギーバンド構造。中央はNA=2×1018cm-3におけるGeSn/GeSiSnのJ-V特性シミュレーション結果。右はNDRが発現するピーク電圧位置のNA依存性[クリックで拡大] 出所:名古屋大学
左はNA=1018cm-3におけるGeSn/GeSiSnのエネルギーバンド構造。中央はNA=2×1018cm-3におけるGeSn/GeSiSnのJ-V特性シミュレーション結果。右はNDRが発現するピーク電圧位置のNA依存性[クリックで拡大] 出所:名古屋大学

 今回試作したGeSn/GeSiSn RTDのピーク電流密度(PCD)は数kA/cm2にとどまっている。しかし、理論通りに動作させることができれば1000kA/cm2を超えるという。このため、結晶品質の向上や表面パッシベーション技術の開発などを行っていけば、現行のIII-V族化合物半導体RTDに匹敵するPCD値を実現できる可能性があるという。

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