極薄の先端半導体チップを高スループットで実装、生産効率10倍:レーザー転写技術を応用
東レエンジニアリングは、レーザー転写技術を応用して、極薄の半導体チップを高いスループットで実装できる技術を開発した。次世代の情報通信システムなどに用いられる先端半導体チップの実装工程で、生産効率を従来の10倍以上に高めることが可能になるという。
転写位置精度、歩留まり、スループットをバランスさせた実装技術
東レエンジニアリングは2025年8月、レーザー転写技術を応用して、極薄の半導体チップを高いスループットで実装できる技術を開発したと発表した。次世代の情報通信システムなどに用いられる先端半導体チップの実装工程で、生産効率を従来の10倍以上に高めることが可能になるという。
先端半導体デバイスにおける3次元実装や、次世代の通信技術を支える光集積回路の組み立て工程では、厚みが20μm以下の半導体チップや、厚みが1μm以下の化合物半導体チップなど極薄チップを実装する時に、高い位置精度と処理能力が求められる。
そこで東レエンジニアリングは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成事業「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」において、薄型チップを高速に実装できる技術の開発に取り組んできた。
東レエンジニアリングは今回、高精度レーザー加工位置制御技術とレーザー転写プロセスに最適化したレーザー光学系を開発。これらを組み合わせた「スキャン方式」と呼ぶ技術により、チップの端部から微小なレーザー光を順番に照射し、チップの姿勢を安定に保ちながら極薄チップをキャリア基板から剥がし、キャッチ基板に転写することに成功した。この方式を用いることで、「転写位置精度」「歩留まり」「スループット」について、バランスの取れた実装を可能とした。試作した実証装置は、300mmウエハーと515×500mmサイズのパネルに対応している。
開発したレーザー転写技術を実証するため、チップサイズ5×5mmで厚みが10μmの半導体チップを試作した。実証試験の結果、±2μm(3σ)という高い精度で転写に成功した。半導体チップには転写によるダメージがないことも確認した。また、チップサイズ0.15×0.70mmで厚み1μm以下の化合物半導体チップについても、転写とシリコン基板への接合に成功した。
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