GaNで半導体製造の欠陥検出 キオクシア岩手で検証へ:DSeB技術を用い深部領域を観察
名古屋大学発スタートアップのPhoto electron Soul(PeS)と名古屋大学の天野・本田研究室は、共同開発したGaN系半導体フォトカソード技術を用いた検査・計測システムをキオクシア岩手に導入し、半導体デバイス製造工程での欠陥検出などについて評価を行うと発表した。
アスペクト比が高い底部の異物や構造欠陥などの検査が可能に
名古屋大学発スタートアップのPhoto electron Soul(PeS)と名古屋大学の天野・本田研究室は2025年8月、共同開発したGaN系半導体フォトカソード技術を用いた検査・計測システムをキオクシア岩手に導入し、半導体デバイス製造工程での欠陥検出などについて評価を行うと発表した。
PeSと天野・本田研究室はこれまで、GaN系半導体材料を用いた光電子ビーム源(GaN系フォトカソード)の共同研究に取り組んできた。この成果を基にPeSは、GaN系フォトカソードを搭載した電子銃を開発した。
半導体フォトカソードは、光を照射することで電子を放出する機能を備えた半導体材料で構成された電子源である。今回はGaN系フォトカソードを新たに開発し、これまで課題とされてきた耐久性を従来の20倍以上に高めた。これによって、半導体製造現場で実用化のめどとなる、「電子ビームの運転時間」と「アップタイム率」を達成した。
さらにPeSは、GaN系フォトカソードのナノ秒パルス電子ビームを生かした「選択的電子ビーム照射(DSeB)」技術を開発した。このDSeB技術を用いることで、微細なトランジスタにおいてゲートバイアスが発生する様子を非接触で観測できた。また、高アスペクト比のシリコントレンチ底部にある異物や、底部領域の構造を観察することも可能となった。
キオクシア岩手は、3D構造のフラッシュメモリなどを製造している。PeSらが開発したこの検査・計測システムを製造工程に導入し、「欠陥検出」や「原因特定などの歩留まり改善」に効果があるかどうかを検証していくという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
AlN適用のUV-Cレーザーダイオード実用化へ 旭化成がULTEC設立
旭化成は、旭化成発スピンアウトベンチャー「ULTEC(ウルテック)」を設立した。窒化アルミニウム(AlN)を用いた超ワイドギャップ半導体技術をベースに、名古屋大学の天野・本田研究室と共同研究してきた「深紫外線レーザーダイオード(UV-C LD)」などの早期実用化と市場拡大を目指す。室温動作の共鳴トンネルダイオードを試作
名古屋大学は、IV族混晶半導体のみで高品質の二重障壁構造(DBS)を形成する技術を開発した。この技術を用い、テラヘルツ(THz)発振に必要な共鳴トンネルダイオード(RTD)を試作し、室温(300K)での動作実証に成功した。半導体産業を支援するコミュニティ「RISE-A」設立、三井不動産
三井不動産は、半導体分野における技術とニーズをつなぐ産業支援コミュニティとして、一般社団法人「RISE-A(ライズ・エー)」を設立したと発表した。既に会員募集を始めており、半導体分野の産業創造に向けた共創の場や機会を提供する。RISE-Aの理事長には名古屋大学教授の天野浩氏が就任した。熱電モジュール向け新材料「熱電永久磁石」を開発
物質・材料研究機構(NIMS)は東京大学や名古屋大学と共同で、横型熱電変換性能が極めて高い新材料「熱電永久磁石」を開発した。この材料を用いて試作した熱電モジュールは、「横型モジュールとして世界最高の電力密度を実現した」という。AIで半導体の製造工程を最適化 ウエハーからデバイスまで一気通貫で
名古屋大学や理化学研究所、グローバルウェーハズ・ジャパン、アイクリスタルおよび、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングは、シリコン(Si)ウエハー製造からCMOSイメージセンサー(CIS)製造までの工程を一気通貫で最適化することに成功した。最適化に要する時間も従来の1000分の1に短縮できたという。層厚を制御した多層構造の人工強磁性細線を作製
岐阜大学と名古屋大学、早稲田大学、京都大学の研究グループが、層膜を制御した多層構造の「人工強磁性細線」の作製に成功した。人工強磁性細線を利用した大容量メモリや磁気センサーの開発などに期待する。