Infineonのパワー半導体最前線 「技術革新の中核」フィラッハで聞く:300mm工場クリーンルームも公開(2/2 ページ)
Infineon Technologiesが、オーストリア・フィラッハ拠点でメディアやアナリスト向けのイベントを実施。事業責任者らが同社のシリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)および窒化ガリウム(GaN)パワー半導体の最新動向について語ったほか、2021年にオープンした300mmウエハー工場のクリーンルームも公開した。
「最も競争力が高く、最も生産性の高いSiC」
SiCについては、「WBG材料として既に成熟段階にあり、現在拡張を進めているところだ」と説明。アプリケーションにおける性能および効率の向上だけでなく、幅広い普及を可能にするコストポジションの確立にも注力していて、フィラッハの200mmウエハープロセスで製造した最初の製品を、2025年第1四半期(1〜3月)から顧客に供給開始した。フィラッハ工場の他、マレーシア・クリム拠点でも200mm SiCウエハー対応工場を新設し、200mmウエハー移行を進めていて、「フルスケールで稼働すれば、世界で最も競争力が高く、最も生産性の高いSiCになる」と強調していた。なお、フィラッハやクリムの生産能力や稼働率については明かさなかった。
InfineonのSiCは、独自のトレンチ技術によってオン抵抗を限りなく抑えるとともに、高いスイッチング性能を備えるのが大きな特長だ。さらにパッケージ技術「Q-DPAK」で低コストかつ高い電力密度とシステム効率も実現するとしている。
Kuncic氏は「現在では750V耐圧のSiC MOSFETでオン抵抗を4mΩを可能にした。これは驚異的なことだ。1桁ミリオームのオン抵抗は、これまで低電圧MOSFETの領域だった。6、7年前、例えば80V品で行っていたことが、現在は750V品で実現できる。これは当社のSiC技術およびパッケージング技術の進歩、そしてフィラッハが得意とする、非常に薄いウエハーでの製造能力が優位性を生み出した結果だ」と強調していた。
300mmウエハー工場の内部を公開
Infineonは今回、集まったメディアおよびアナリストに2021年に操業を開始した300mm薄型シリコンウエハーのクリーンルームをメディアに公開した。内部では自動搬送装置が各装置間を行き交い(自動搬送装置のラインは全体で長さ6km)ウエハーボックスを運搬、ウエハー毎に1000もの工程がある製品を、1800種類並行して同時に製造する様子の一部が確認できた。
なおInfineonのGaNパワー半導体に関してGaN事業部門責任者であるJohannes Schoiswohl氏が語った最新動向については、後日別稿で紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Infineonが初の車載GaNパワートランジスタを生産開始 100V耐圧品
Infineon Technologiesが、車載用電子部品の信頼性規格「AEC-Q101」に適合した同社初の窒化ガリウム(GaN)トランジスタファミリーの生産を開始した。併せて高耐圧GaNトランジスタおよび双方向GaNスイッチを含むAEC-Q101準拠品のサンプル供給も開始した。Infineonが車載RISC-Vマイコンをアピール 「日本のティア1は特に関心が高い」
Infineon Technologiesの日本法人であるインフィニオン テクノロジーズ ジャパンは2025年9月30日、日本の顧客向けに「RISC-Vマイコンと車載アプリケーションの未来:インフィニオンのビジョンとエコシステムの構築」と題したセミナーイベントを開催。自動車メーカーやティア1メーカーなどの関係者が集まった。SiCの20年 ウエハーは「中国が世界一」に、日本の強みは何か
次世代パワー半導体材料として注目度が高まる炭化ケイ素(SiC)。SiCパワーデバイスの研究開発は2000年代以降、飛躍的に進展してきた。SiCのこれまでの研究開発やパワーデバイス実用化の道のり、さらなる活用に向けた今後の課題について、京都大学 工学研究科 教授 木本恒暢氏に聞いた。ロームとInfineon、SiCパワー半導体のパッケージ共通化で協業
ロームとInfineon Technologiesが、炭化ケイ素(SiC)パワー半導体のパッケージ共通化で協業する。車載充電器、太陽光発電、エネルギー貯蔵システム、AIデータセンターなどで採用されるSiCパワーデバイスのパッケージについて、両社が相互に供給するセカンドソース体制の構築を進める。Infineon、GaN搭載の軽EV用インバーター開発で中国メーカーと協業
Infineon Technologiesが、中国Ninebot子会社のLingji Innovation Technologyと窒化ガリウム(GaN)パワーデバイス搭載の軽電気自動車(LEV)向けインバーター開発で協業する。InfineonがGaNパワー半導体を供給し、Lingjiの電動二輪車用インバーターシステム開発をサポートする。「コイン1枚に5トンのゾウ4頭分」の応力を制御、300mm GaNウエハーの量産近づく
300mmウエハーでの量産が始まれば、大幅なコスト低減が期待できます。