まるでAppleチップの「展示会場」 iPhone Airを分解:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(97)(3/3 ページ)
今回はApple「iPhone Air」「iPhone 17」シリーズを分解する。主要チップはほとんどApple製を使用している。過去3世代の「Pro」プロセッサを比較した結果なども報告する。【訂正あり】
過去3世代のプロセッサを比較する
図6は過去3世代のApple AシリーズProプロセッサの様子である。2023年 iPhone15 Proで最初のTSMC 3nm A17 Proが搭載された。TSMCの第1世代3nm N3BでA17 Proは製造されている。TSMCのすごさだが、TSMCはほぼ毎年製造プロセスのブラッシュアップを行い、2024年にN3E、2025年にN3Pを適用し、トランジスタ性能を向上させ続けている。詳細な説明は省くが、トランジスタ動作が速くなると同じ機能の面積は縮小し、さらに動作速度がアップする。ファンアウト分割が減る、駆動能力を上げなくても(小面積セルでも)タイミングを満たすことができるなど理由は多い。過去3世代でAシリーズProプロセッサは若干機能アップを果たしながらも、面積を14%減らし、速度を13%上げている。2026年以降に登場する2nmも間違いなく、面積を削減しつつ速度を上げていくだろう。観察できる日が今から楽しみだ。
2種のプロセッサを作り分け
図7は無印 iPhone 17に搭載されるA19プロセッサと、iPhone Air/Proに搭載されるA19 Proの比較である。同世代に2つのシリコンを開発するためにコストが掛かるものの、同じコアの個数やキャッシュ容量を変えるなどの差だけなので、設計やテスト工数は、さほど変わらない構成になっている。シリコン面積差はおおよそ17%。無印のA19は20%程度製造コストを抑えられるので、2種のプロセッサを開発する効果が十分にあるわけだ(費用対効果の数字は本報告では掲載しない)。Appleは2024年のA18から、無印のA18とA18 Proを別々のシリコンとして作り分けている。数量の多いiPhoneなので作り分けをしても十分に費用対効果が得られるからだ。
図8は、iPhone 17シリーズと同時発売となった「Apple Watch Series 11」の5Gモデム版と「AirPods Pro 3」の様子である。Apple Watch Series 11内部のSIP(System In Package)の形状は前モデルであるApple Watch Series 10とほぼ同じだが、Air Pods Proは、異形SIPからバー型SIPに大きく変わっている。SIP内部については機会あれば報告したい(詳細解析済み)
次回は今月予定だった2025年の最新ドローンについて報告予定です。
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