中国が「半導体製造装置の自給自足」に苦戦している理由(前編):「国産化50%」の実像と課題(2/2 ページ)
中国が国内半導体メーカーに対し、新工場を建設時に前工程製造装置(WFE)全体の少なくとも50%を国内メーカーから調達することを実質的に義務付けていると報じられた。だが、この措置で中国は本当に国内WFE産業を加速できるのか。
止まらぬWFE支出、単一最大の「買い手」であり続ける中国
中国は2020年にWFE支出で主導的な地位に浮上した。米国政府が2021年、中国向けの先端チップ製造装置に輸出許可を義務付ける新たな輸出規則を発表した後、中国の半導体ベンダーはSPEの調達を一斉に加速させ、多くの装置が疑わしい経路で彼らの手に渡った。
Hutcheson氏は「もちろん、(制限対象装置の出荷が)今日どのように行われているかを正確に知る者は、関与している人々を除けばいない。なぜならそれは犯罪行為だからだ。とはいえ、冷戦時代から続く典型的な再輸出や迂回輸送の手口である可能性が高い。初期には、何が該当し何が該当しないのかについて混乱が大きかった。例えば、装置が外国で製造され外国から輸出されたなら、仮に企業の本拠地が米国であってもOKだという考え方があった」と述べた。
一般的に大規模な装置の購入が続いた後には「消化局面」が訪れ、企業は購入を最小化する。しかしEE Timesが確認したUBSのレポートによると、この状況が6年目に入った現在も、中国半導体メーカーは、半導体の自給自足計画に押される形で新たな装置への投資を続けているという。ただ、国内製システムの比率も高まりつつあるという。
UBSは、中国の半導体産業が2025年、新規のWFEに約427億5000万米ドルを投じたとみている。対象には、主要ロジックメーカーのSMICとHua Hon Semiconductor、主要メモリメーカーのCXMTとYMTC、そして主にレガシーノードに注力する小規模チップメーカーが含まれ、サプライヤーは中国系と多国籍系の双方にまたがる。この数字は、従来の「300億米ドル台半ば」という想定を大きく上回る。
UBSはさらに、中国のWFE支出が2026年には470億5000万米ドルに増加した後、2027年に500億米ドル、2028年に503億5000万米ドルへと拡大を続けると予測している。今後数年における台湾、韓国、米国のWFE支出がどの程度になるかにもよるが、中国は輸出規制が強化される中でも、今後数年にわたり半導体生産装置の単一最大の「買い手」であり続ける可能性が高い。
UBSは、増設される能力が先端ロジック(同社は28nm/22nm以下と定義)、メモリ、そして300mmのレガシー生産にまたがるとみている。これは、成熟ノードのインフラ増強が続くことに加え、28nm未満ノードでのキャッチアップの取り組みも続くことを意味する。ただし、中国のチップメーカーが14nmロジックやそれより先端のプロセス技術に必要な装置をどのように確保するのかは、不透明なままだ。
UBSの顧客向けレポートは、2026年以降、中国のWFE支出が力強く成長すると予想する。理由は下記3点だ。
- 中国メモリ企業におけるメモリの強い需要と数年にわたる能力拡張サイクル
- 国内ファウンドリー/垂直統合型メーカー(IDM)の高い稼働率
- 先端ロジック/メモリ生産の先端領域でキャッチアップを進める中国の動き
レポートでは「さらに長期的には、生産における自給自足追求が続くことで上振れも見込む」と述べている。
国内装置メーカーの台頭とシェア変化
レポートで強調されている主要因の1つは、海外製装置から国産装置への置き換えが加速していることだ。WFE支出の増加分が、中国の装置メーカーへと流れ込み、米国、日本、オランダのサプライヤーではなく国内勢に向かう割合が高まっている。海外ベンダーは中国での売上高が減少する一方、地場プレイヤーは大幅に速いペースで拡大している。支出の絶対額は安定して見えても、市場シェアの構成は国内ベンダーに有利な方向へ変化している。
USBは中国のWFEベンダーとしてACM Research、Advanced Micro-Fabrication Equipment(AMEC)、Naura Technology Group(以下、Naura)を追跡調査している。ACM Researchは洗浄、電解めっき、ウエハー研磨、プラズマ強化化学気相成長(CVD)の装置を製造し、AMECとNauraはエッチングおよびCVDシステムを専門とする。
UBSは、ACM Researchの2025年売上高を9億8600万米ドルと推定し、2026年に11億8500万米ドル、2027年に17億300万米ドルへ伸びると見込んでいる。AMECは2025年に17億8500万米ドル、2026年に26億2000万米ドル、2027年に36億5300万米ドルの売上高に達すると予測。Nauraは、2025年の売上高が57億600万米ドル、2026年が76億6400万米ドル、2027年が102億7600万米ドルと予測している。
今後数年にわたる中国製WFEの総売上高を予測するのは依然として難しい。しかし、ACM Research、AMEC、Nauraが製造する装置への支出比率は、中国のWFE総支出に対して2025年の約20%から、2026年に24%、2027年に31%へ高まると予測されている。なおUBSの予測モデルが、「国産装置50%要件」を既にこれらの予測に織り込んでいるかどうかは不明である。
⇒「後編」に続く
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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