onsemiのSynaptics買収が示す、エッジAIの本格到来:フィジカルAIに重点(2/2 ページ)
onsemiが約70億米ドル相当の全株式交換による取引でSynapticsを買収すると発表した。同社にとって過去最大の買収となるこの取引での狙いは、エッジAI/フィジカルAIにある。
HMIの先駆者Synaptics、onsemiの技術とどう融合するか
Synapticsは1986年、半導体業界の著名な技術者であるFederico Faggin氏とCarver Mead氏によって設立された。Faggin氏は世界初の商用マイクロプロセッサ「Intel 4004」の設計者として知られ、1974年にはZilogも創業している。一方、Mead氏は、複雑化するチップ設計プロセスを論理設計、回路設計、レイアウト設計に分割し、それらを製造プロセスから切り離す新たな設計手法を考案した。
Synapticsは、生体機能をシリコン上で再現する取り組みを進めた結果、ノートPC向けタッチパッド、タッチスクリーン技術、ディスプレイドライバー、人体検知センサー、スマートフォン向け指紋認証スキャナー、車載およびスマートホーム向け遠距離音声認識技術などで広く利用されるHMIチップを生み出した。
ここ数年でSynapticsは、HMI技術とAIネイティブなコンピューティングおよびコネクティビティ技術を組み合わせることで、エッジAI分野の有力企業へと成長した。その代表例が「Astra」プラットフォームだ。Astraは、マルチモーダルなインテリジェンスを実現する専用AIプロセッサとNPUに加え、Wi-Fi、Bluetooth、GPSに対応するワイヤレスコネクティビティを統合している。さらに、迅速な導入を可能にするフルオープンソースのソフトウェアスタックも提供している。
Astra SL2610プロセッサは、スマート家電、住宅および工場の自動化機器、充電インフラ、小売店のPOS端末、スキャナー向けにマルチモーダルAIコンピューティング機能を提供する[クリックで拡大] 出所:Synaptics
今回の買収は、HMIの先駆者にとっては1つの時代の終わりである。それと同時に、電力/センシング技術を強みとする企業にとってエッジAI分野での新たな出発でもある。今後、onsemiがSynapticsのエッジAIおよびHMI技術を自社のシリコン製品へどのように統合していくのかが注目される。また、主に民生市場向けだったSynapticsの技術が、onsemiの自動車および産業向けポートフォリオとどのように融合するのかも見どころだ。
米国EE TimesがSynapticsにコメントを求めたところ、同社は規制上の制約を理由に回答を控えた。今回の買収は規制当局の承認を前提としていて、2027年半ばに完了する見込みだ。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
onsemiが米国とフィリピンの2工場を売却 ファブライト推進
onsemiが、米国の8インチウエハー工場およびフィリピンの後工程工場の2つを売却すると発表した。同社が推進する「ファブライト戦略」の一環であり、全社的な製造コスト構造を改善し、粗利益率の持続的な拡大を図る。
onsemiのGaNが本格始動 まずはGFやInnoscience活用の製品投入
onsemiは世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Expo & Conference 2026」において、新たな窒化ガリウム(GaN)パワー半導体ポートフォリオ「GaNEXUS」を初公開した。AIデータセンターやロボティクスなどの市場向けに展開する。縦型GaNの開発も進めているが、まずは外部ファウンドリー活用による製品によって市場参入を進める。
1億画素グローバルシャッター搭載画像センサー公開、onsemi
onsemiは、1億〜3億画素という超高解像度のグローバルシャッター搭載イメージセンサーを開発している。ドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2026」(2026年3月10〜12日)では、1億画素品のデモを公開した。
今度はGFと650V品で協業、GaNパワー半導体でonsemiが攻勢
onsemiが窒化ガリウム(GaN)パワー半導体事業で攻勢に出ている――。onsemiは2025年12月18日(米国時間)、650V GaNパワーデバイスの開発と製造においてGlobalFoundries(GF)と協業すると発表した。2026年上半期にもサンプル出荷を開始する予定だ。
「日本は重要市場」 縦型GaNデバイスと最新ADAS技術を披露、オンセミ
onsemiはプレス向け説明会を実施し、車載向けイメージセンシング技術の取り組みや日本市場での戦略を紹介した。車載向けイメージセンサーのデモに加え、2025年10月にサンプル提供を開始した縦型窒化ガリウム(GaN)パワーデバイスも披露した。
スマホの音響/触覚FBを圧電素子で高品質に実現
Synapticsはドイツ・ニュルンベルクで開催された組み込み技術の展示会「embedded world 2023」で、スマートフォンなどにおけるスピーカーや触覚フィードバック機能を、圧電トランスデューサーで実現する新技術を発表した。