onsemiのGaNが本格始動 まずはGFやInnoscience活用の製品投入:PCIM Expo & Conference 2026
onsemiは世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Expo & Conference 2026」において、新たな窒化ガリウム(GaN)パワー半導体ポートフォリオ「GaNEXUS」を初公開した。AIデータセンターやロボティクスなどの市場向けに展開する。縦型GaNの開発も進めているが、まずは外部ファウンドリー活用による製品によって市場参入を進める。
onsemiは世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Expo & Conference 2026」(2026年6月9〜11日/ドイツ・ニュルンベルク)において、新たな窒化ガリウム(GaN)パワー半導体ポートフォリオ「GaNEXUS」を初公開した。AIデータセンターやロボティクスなどの市場向けに展開するものだ。
40〜1200V以上まで、GaN展開で攻めるonsemi
onsemiは2025年10月に700Vおよび1200V対応の縦型GaNパワーデバイスを発表。さらにその後、2025年12月には中国Innoscienceと40〜200V領域、GlobalFoundries(GF)と650V GaNパワーデバイスについて、開発/製造に関する協業を相次いで発表し、GaN市場での本格展開に向けた体制を整えてきた。
そして2026年6月9日に発表したのがGaNパワーポートフォリオ「GaNEXUS」だ。GaNEXUSは、上述のGFおよびInnoscienceで製造しているという。説明担当者は「われわれはこれらの製品においてまずはファウンドリーを活用する。現時点で公表しているのはGFとInnoscienceだが、この2社以外についても検討はしている」などと説明していた。
GaNEXUSではまず、40〜200V対応の低/中耐圧GaNEXUS FET、650V対応の高耐圧GaNEXUS FETおよび保護機能やセンシング機能を統合した「650V GaNEXUS Smart」を展開する。高速スイッチングや低スイッチング損失、高電力密度、優れた熱特性を特徴とし、AIサーバ向けの中間バスコンバーター(IBC)やPOL、モータードライブ、高周波絶縁DC-DCコンバーターなどを主なターゲットとしている。米国国内においてはいずれも既にサンプル提供中だ(日本国内での提供時期は未定)
onsemiによるとAIサーバ向け48VIBCやバッテリーバックアップユニット(BBU)、モータードライブなどの低/中電圧システムでは、磁気部品を約30〜60%小型化できるほか、電力密度を約1.5〜2倍に向上できるという。また、トポロジーによっては0.5〜2%の効率改善も可能としている。さらに高電圧DC-DCコンバーターや力率改善(PFC)、LLC電源段などの高電圧アプリケーションにおいても、磁気部品サイズを最大60%低減可能な他、1.5〜2倍の電力密度向上や0.5〜1%の効率改善などが実現できるという。
AIサーバ/データセンターやロボティクス向けに
PCIMの会場ではGaNEXUSを用いた複数のデモボードを展示していた。AIサーバ向けでは48Vから12Vへ変換する1.5kW マルチフェーズIBCに加え、700〜900V入力、デュアル50V出力に対応する12kW 高電圧IBCを公開。後者はスタックドLLCトポロジーを採用し、効率98%(ピーク98.8%)、電力密度990W/in3を実現するという。AIデータセンター向けの高電圧電源アーキテクチャを想定していて「AIインフラ向け高出力/高周波IBCアーキテクチャにおけるGaNの優位性を示すものだ」などと説明している。
また、ロボティクス向けにも1kW級モータードライブを展示。ヒューマノイドロボットやドローン向けを想定したもので、GaN活用によって電源回路やモーター駆動回路の小型化、軽量化を図れるとし、電力変換だけでなくセンシングや保護、通信機能まで統合したプラットフォームとして提案していた。
GaNEXUSは、TOLLやTOLTおよび3.3mm×3.3mmと5mm×6mmのデュアルクーリングパッケージなど、デュアルソース対応の業界標準フットプリントを採用したパッケージを採用。なおGaNEXUSではさらに、モノリシック双方向スイッチやゲートドライバー統合品、制御回路統合品なども開発中だという。
縦型GaNの開発も進む、現状は
上述の通り、onsemiは700Vおよび1200V以上の領域については、GaN on GaN技術を用いた縦型GaNを展開する方針だ。onsemiは、2023年末に操業を停止した縦型GaN開発のNexGen Power Systems(以下、NexGen)の半導体工場(米国ニューヨーク州シラキュース)およびIP(Intellectual Property)を取得。同技術をベースに2027年の量産開始を目指している。
説明担当者は「われわれは縦型GaNプロセスの改良に取り組む大規模なチームを擁している。NexGenの技術を出発点としてプロセス改良を進めていて、量産化と認証取得に向けた段階にある」と説明した。
onsemiは縦型GaNに最適なパッケージや専用ドライバーも開発中で、将来的にはドライバーとGaNデバイスを統合した製品も視野に入れているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
TSMC撤退の逆風越え、浜松に技術者集結――27年GaN内製化へ全力のローム
TSMCの撤退を受け、8インチでのGaNパワー半導体自社製造に舵を切ったローム。「あと1年半で量産」という目標に向け、浜松に技術者が集結しています。
SiCの理論限界に迫る低損失 AlN系SBDの動作実証に成功
東京大学とNTTは、損失が極めて小さい窒化アルミニウム(AlN)系ショットキーバリアダイオード(SBD)を開発し、動作実証に成功した。作製した素子は、AlN系デバイスの中で世界最小となるオン抵抗0.34mΩcm2および、逆方向耐圧400V(最大破壊電界8MV/cm)を達成した。この値はSiCやGaNの理論限界に迫るものだという。
「800Vシステムは2027年から提供予定」 TIのAI電源戦略
日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)は2026年5月21日、同社の電源分野における取組を紹介するメディア向け説明会を開催した。NVIDIAと共同発表したAIデータセンター向け800V DCアーキテクチャなど、同社の開発状況などについて解説した。
パワー半導体世界市場、2035年は7兆円超え 酸化ガリウムも一定規模に
富士経済は2026年4月、パワー半導体世界市場の予測を発表した。2030年ごろから次世代パワー半導体の実用本格化が進み、市場が大幅に拡大。2035年には、2025年比で95.7%増となる7兆3495億円になると予測する。
Infineon、AI電源事業が驚異的成長 「売り上げ3年で10倍に」
Infineon Technologiesはドイツ・ドレスデンにおける300mmウエハー新工場の建設が前倒しで進んでいて、開所は2026年7月2日になると明かした。3年で10倍の成長を見込むAIデータセンター向け電源事業の需要に対応するため、フル稼働時には年50億ユーロ程度の売上高を見込むとする同工場の生産立ち上げを加速していく。
ルネサスがGaN事業拡大、米国EPCとライセンス契約
ルネサス エレクトロニクスが窒化ガリウム(GaN)パワーデバイス事業を強化する。同社は米国のGaN専業メーカーEPCと包括的なライセンス契約を締結。EPCの低耐圧GaN技術にアクセス可能となり、「AI向け電源アーキテクチャなど高ボリューム市場での機会を拡大する」としている。



