EtherCAT通信の仕組みを知ろう〜メイドは超一流のスナイパー!?:江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る(2)(8/8 ページ)
今回は、EtherCATの仕組みを信号レベルでご説明します。「ご主人様(EtherCATマスタ)」と「メイド(EtherCATスレーブ)たち」が、何をどのようにやり取りをしているのかを見てみると、「メイドたち」が某有名マンガのスナイパーも腰を抜かすほどの“射撃技術”を持っていることが分かります。後半では、SOEM(Simple Open EtherCAT Master)を使ったEtherCATマスタの作り方と、簡単なEtherCATの動作チェックの方法を紹介しましょう。
simple_test.exeによる動作チェック
(Step.5)simple_test.exeによる動作チェック
さて、SOEMとEtherCATスレーブが正常に動いているかどうかを、確認します。
現時点では、デジタルIOのスレーブ1台のみがつながっている状態にしてください。起動の状態を、先月お見せしたものと同じで恐縮ですが、動画(Youtube)でご覧ください。
スレーブによっては、ウンともスンとも言わない場合もありますが、今回はそれでも構いません。次回は、皆さんの環境に合わせて、simple_test.cを修正して、この「動かないスレーブ」を動かします。
先月のコラムを読み直してみると、「次回は、私がこのEtherCATの連載をEE Times Japan編集部に提案させていただいた経緯や、また、SOEMの開発者の方とのやりとりについても、お話ししたいと思います」と書いてありますが、今回一言も言及できませんでした。
誠に申し訳ありませんでした。
今回の原稿を書き出したら、「オタク」だの「ネクラ」だのと決め付けられたキャンパスライフがフラッシュバックしてきまして、怒りにまかせて書き続けていたら、導入部だけで10ページを超える惨事になってしまいました。
慌てて削除したものの ―― 結局、今回も長文を製造してしまいました。
私のコラムは長いので、嫁さんや娘たちは、査読後に、ゲッソリして机に突っ伏していることがあります。
担当者さんのメールの文面からは、「江端さんは、(文量を)気にしないでいいんですよ〜〜」と言いながら、笑顔が引きつっている様子が読みとれます。他のWeb媒体の編集担当者の方からも、打ち合わせの場で「長い。なんとかしろ」という趣旨のことを言われたこともあります。
そんな査読者、編集部そして読者の皆さんに対し、最大級の謝罪を込めて、私から申し上げることは、この一言に尽きます。
―― 諦めてください。
「英語に愛されないエンジニア」が、何をしても英語に愛されないように、何をしても「文章を簡潔に書けないエンジニア」 ―― も、いるのです。
では、次回、またお会いしましょう。
Profile
江端智一(えばた ともいち)
日本の大手総合電機メーカーの主任研究員。1991年に入社。「サンマとサバ」を2種類のセンサーだけで判別するという電子レンジの食品自動判別アルゴリズムの発明を皮切りに、エンジン制御からネットワーク監視、無線ネットワーク、屋内GPS、鉄道システムまで幅広い分野の研究開発に携わる。
意外な視点から繰り出される特許発明には定評が高く、特許権に関して強いこだわりを持つ。特に熾烈(しれつ)を極めた海外特許庁との戦いにおいて、審査官を交代させるまで戦い抜いて特許査定を奪取した話は、今なお伝説として「本人」が語り継いでいる。共同研究のために赴任した米国での2年間の生活では、会話の1割の単語だけを拾って残りの9割を推測し、相手の言っている内容を理解しないで会話を強行するという希少な能力を獲得し、凱旋帰国。
私生活においては、辛辣(しんらつ)な切り口で語られるエッセイをWebサイト「こぼれネット」で発表し続け、カルト的なファンから圧倒的な支持を得ている。また週末には、LANを敷設するために自宅の庭に穴を掘り、侵入検知センサーを設置し、24時間体制のホームセキュリティシステムを構築することを趣味としている。このシステムは現在も拡張を続けており、その完成形態は「本人」も知らない。
本連載の内容は、個人の意見および見解であり、所属する組織を代表したものではありません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 産業/FA/医療――新市場狙い活気づくWi-Fi市場、勝ち残る戦略は何か?
今までインターネットにつながってこなかった、「非PC/モバイル」の機器が、M2Mやモノのインターネットというコンセプトと絡みつくことで、新たな市場が生まれようとしている。今後数年で競争が激しくなることが予想されるこの市場で、いかに戦っていくか。組み込み向けWi-Fiモジュールを手掛けるサイレックス・テクノロジーの戦略をまとめた。 - 人類は、“ダイエットに失敗する”ようにできている
今回から新シリーズとしてダイエットを取り上げます。ダイエット――。飽食の時代にあって、それは永遠の課題といっても過言ではないテーマになっています。さて、このダイエットにまつわる「数字」を読み解いていくと、実に面白い傾向と、ある1つの仮説が見えてきます。 - TOEICを斬る(後編) 〜“TOPIC”のススメ〜
今回、「TOEIC」の代替案として提唱するのが「TOPIC(Test of Playing for International Communication)」です。その名の通り、“演技をする(Play)”テストになります。つまり、自分が伝えたいことを、いかに正確にジェスチャで伝えられるかを客観的に評価するわけです。空港に行きたいとき、相手を責めるとき、トイレを我慢しているとき……。あなたはどのようなジェスチャで伝えますか? - 【NIWeek 2012】LabVIEWが奏でる“オーケストラ”が青く光る!?――数多くのデモに注目
LEDアニメーションに同期させて楽器を演奏するデモやビール醸造システム、3Dプリンタなど――。2012年8月6日〜9日(現地時間)に開催された「NIWeek 2012」の展示会場には、National Instrumentsのグラフィカル開発ツール「LabVIEW」や計測/制御ハードウェアを、組み込みシステム用途で活用したデモが注目を集めていた。 - リアルタイム制御とネットワーク処理を同時に実現、ルネサスのFA用マイコン
ルネサス エレクトロニクスは、ハイエンドマイコン「RZファミリ」として、産業ネットワーク機能を内蔵した「RZ/T1グループ」10品種を新たに発表した。産業機器の高度なリアルタイム制御とネットワーク処理を1チップで実行することが可能となる。