スマホ市場の“敗者”に残された道:製品分解で探るアジアの新トレンド(7)(3/3 ページ)
前回に続き、中国iaiwaiの格安スマートウォッチ「C600」について検証する。スマートウォッチをはじめとするウェアラブル機器やIoT(モノのインターネット)機器の市場が開拓された背景には、スマートフォン市場でどうしても勝てなかった者たちの“失地回復”に向けた努力があった。
2つのチップの相違点
チップを分解した結果を図3に掲載する。
2つのチップはサイズも内部の配置も一致したものだが、違いが2つだけある。1つ目は、片方はパッケージ内部で2つのチップが接続されるSIP(Silicon In Package)構造を取っていること。2つ目は、2つのチップ(パッケージ開封後に確認できるチップ)に刻印されている日付が違っていることである。日付はわずかに1カ月違いだ。恐らくベースとなっているチップが「MT6261A」で、一部を改造して派生させたものが「MT2502」なのであろう。基本機能はどちらも共通だからだ。
生き残れるのは迷いがないメーカーか
スマートフォン市場から弾き出された前記の老舗メーカー群が、IoTやウェアラブルの新市場でシェアやポジションを十分に確保できるであろうか。
スマートフォンでの成功に甘んじることなく、MediaTekは次々と手を打ってくる。このチップには最先端な仕様はない。しかも3世代ほど古い安価なプロセステクノロジーで製造されている。GSM通信、クラシックなARM7……。しかし、中国やアジアではLink It OneやMT6261Aを活用した製品はまるで雨後のたけのこのごとく生まれている。息せいて最新パーツを最新プロセスで作らなくても、製品は登場する。ウェアラブル機器やIoT機器、ビーコンなどのエッジ端末市場では、「迷い」がないメーカーしか生き残れないのかもしれない。
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