「在庫は資産」を成立させる半導体商社がいた:半導体商社トップインタビュー フューチャーエレクトロニクス(2/2 ページ)
2016年になっても収まる気配がない、半導体業界に吹き荒れるM&Aの嵐。この業界再編は、半導体商社にとっても変革期を迎えたことを意味するだろう。そこで、EE Times Japanでは、各半導体商社のトップに今後の戦略を問うインタビュー企画を進めている。今回は、フューチャーエレクトロニクスの日本法人で社長を務める徳永郁子氏に話を聞いた。同社は“在庫は資産”の理念を掲げる。
自由に販売できる在庫は60%以上
また、一般的な商社は、1〜1.5カ月分の在庫である上、「その在庫のほとんどは、あらかじめ販売先が決まっているものが多く、自由に販売できる在庫量は15%未満程度」という。それに対し、Future Electronicsは、顧客にひも付けされていない自由に販売できる在庫は60%以上を占めるとする。これにより、EMSや産業機器だけでなく、少量多品種を求める顧客にも対応が可能となっている。
徳永氏は、「グローバルに顧客を持ち、仮に1社の生産計画量が大きく減っても、他の顧客に販売できる環境がある。こうした点も、当社がBIMを提供できる要因。生産計画が変動しやすいEMS(電子機器受託製造サービス)企業に特に好評なサービスで、少量多品種生産で在庫管理が煩雑な産業機器を扱う顧客にも浸透しつつある」と語る。
日本独特の商習慣に大きな壁
同社の日本法人は1997年5月に設立した。2016年8月現在、東京と大阪に拠点を持ち、従業員数は44人。徳永氏はPALTEK元取締役、ゼネラルマネジャーとして海外支店管轄を経て、2015年6月に同社日本法人の社長に就任している。就任から1年、徳永氏は「国内で土俵に立つインフラ作りを進めてきた」とする。大きな壁になったのは、契約書や支払いの手形、口座といった日本独特の商習慣を本社に理解してもらうことだ。
「北米の弁護士が国内顧客の契約書を読むと、“無制限の保証”をさせられると勘違いする。飲食店で熱いコーヒーを飲んでやけどをしたら、数百億円請求されてしまうような感覚に陥いるらしい。私は、必死で何回も『そうではない』と説明した。これらの特殊な商習慣を理解してもらわなければ、国内でのビジネス拡大は難しい」(徳永氏)
また、営業を中心に採用を強化し、約10人の従業員が加わった。品質管理担当部門も新設し、ドキュメントの整備や製品解析などを国内でも対応できるようにしたとする。
「日本はラストフロンティア」
徳永氏によると、グローバルのディストリビューターを含め、国内市場は“ラストフロンティア”の位置付けにあるという。つまり、ある程度の市場規模が期待でき、手付かずの状態として残っているのが国内のみであることを意味する。
徳永氏は、「サプライチェーンしての強みと、技術サポート力を生かして、国内企業がグローバルで価格競争力のある製品を展開する手助けをしていきたい。そのためにも、当社の認知度やブランド力を知ってもらう施策を行っていく」と語った。
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