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加速する5G開発、実用化に向け実証進む米国ノキアの取り組みで探る5G最前線(3)(2/2 ページ)

第3回となる今回は、米国に焦点を当てる。日本、韓国と並んで5G(第5世代移動通信)開発に積極的なのが米国だ。その米国で、2016年はどのような取り組みが進んだのか。

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米国通信事業者の5Gにおける取り組み

 前述したように、WRC15では、5G向けの周波数として28GHz帯は選択されなかった。主な要因は、この周波数帯域を現在使用している衛星サービスプロバイダー(固定衛星業務、FSS)との間で干渉問題が発生する可能性があるからだ。こうした懸念を払拭するため、ノキアはFCCと協力しながら、この件に関する詳細な技術的評価を実施した。この他、FCCにおける多くの取り組みにより、2016年7月の発表では政府の5G戦略に28GHzが含まれることになった。

 2016年1月、Verizonとノキアは、28GHz技術の特性を検証すべく、テキサス州ユーレスで5Gの実験を行った。宅地造成区域内の集合住宅を対象に行った、屋外から屋内への浸透試験などがその一例である。さらに、電気設備と配管設備を完備した多彩な代替建築用材もシミュレーションした。ここでは、複数のエンドユーザーデバイスに超高解像度(UHD)4Kビデオコンテンツを配信するというユースケースを用いている。

 4月には、ニューヨーク大学タンドン技術工科校のNYU WIRELESS研究センターとともに第3回「Brooklyn 5G Summit」を開催。ミリ波対応の5G基地局、フェーズド・アレイ・アンテナ、自律型太陽光発電セル、ネットワークスライシングといった多くのデモが披露された。


「Brooklyn 5G Summit」

 ノキアは同年6月、カリフォルニア州サンタクララで開催されたサッカー選手権、コパアメリカにおいて、5Gのミリ波技術を用いたVR(仮想現実)のデモをSprintとともに実施した。これは、公共の場で大観衆に向けたVRコンテンツを配信するという、特徴的なものだ。

 7月には、米国の通信事業者C Spireとともに、ミシシッピ州で固定無線における5Gの利用に向けたデモを披露した。光ファイバーを用いた商業テレビサービスに直接接続して、2.2Gビット/秒(Gbps)の通信速度と1.4ミリ秒の遅延を達成している。これに加え、カナダの通信事業者であるBell Canadaとは73GHz帯を用いたシステムの実験を完了。現在カナダで使用されているシステムの6倍の速度を達成した。ちなみに、この実験を終えたBell Canadaは、高解像度ブロードキャスト・ビデオ・アプリケーションや、コネクテッドカーおよびスマートシティーを含め、IoTアプリケーションの検討を始めることとなった。

 9月には、T-Mobileとともに28GHz帯を用いた5G通信のデモを実施している。4つの4Kビデオを同時にストリーミングしながら、1秒当たり数ギガビット/秒の通信速度と1.8ミリ秒の低遅延を実現した。

 10月には、U.S. Cellularと、イリノイ州シャンバーグで5G試験を実施し、屋内及び屋外の両環境で固定無線のデモを行った。ここでは、6つの超高解像度4Kビデオをストリーミングして、乾式壁、窓、金属板、樹木などの障害物を用いた浸透試験を行い、5Gbpsの速度と2ミリ秒の遅延時間を達成している。

 これらの取り組みを振り返ると、米国では実に多くの通信事業者が5Gに興味を持っていて、実験の段階までたどりついていることが分かるだろう。大手のオペレーター1社、2社だけが5Gの研究開発に取り組んでいるわけではないのだ。

 5Gは急速に進展していて、これまでのどの世代のテクノロジーよりも迅速に力強く前進している。業界内での動向や標準化の流れや、政府による支援の点からみても、それがうかがえる。とりわけ米国では、この動きが顕著なのである。

 5Gが成熟し、実際に生産性が安定するまでにかかった期間を振り返ってみたとき、ガートナーのハイプサイクルは見直しが求められることになるかもしれない。

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