2.5D(2.5次元)の新世代パッケージング技術:福田昭のデバイス通信(104) TSMCが解説する最先端パッケージング技術(3)(2/2 ページ)
TSMCが開発した2.5次元のパッケージング技術「CoWoS(Chip on Wafer on Substrate)」と「InFO(Integrated Fan-Out wafer level packaging)」を解説する。CoWoSでは、「シリコンインターポーザ」の導入により、樹脂基板では困難な微細配線が可能になった。InFOは、樹脂基板とバンプを省いたことで、低コストで高密度な再配線構造を形成できるようになり、パッケージの小型化と薄型化を実現した。
樹脂基板とバンプ、シリコンインターポーザを省く
そこでTSMCが開発したのが、「InFO(Integrated Fan-Out wafer level packaging)」と呼ぶ2.5次元のパッケージング技術である。
InFO技術の最大の特徴は、樹脂基板とバンプを省いたことだ。CoWoS技術から見ると、シリコンインターポーザも省いている。しかも、シリコンインターポーザに近い密度の再配線構造を形成することで、複数のシリコンダイを横に並べて集積可能にした。樹脂基板とバンプを省くことで材料コストと接続コストが下がり、高密度な再配線構造を形成することで小型化と薄型化を実現した。
InFO技術をフリップチップCSPと比べると、配線ピッチは約10分の1になり、配線密度は約100倍になっている。またシリコンダイとシリコンダイだけでなく、モールド樹脂封止済みパッケージやMEMSデバイスなどと組み合わせることも可能である。モバイル端末はもちろんのこと、IoT(モノのインターネット)端末や高性能コンピューティングなどにも応用可能な、最新世代のパッケージング技術だと言えよう。
ちなみにInFO技術はAppleのスマートフォン「iPhone 7」向けプロセッサ「A10」に採用されたほか、同社の次期プロセッサ「A11(仮称)」にも採用される見込みだ(関連記事:「TSMC、Apple「A10/A11」をほぼ独占的に製造か」)。
(次回に続く)
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