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意思決定の仕方を変えて、周りを巻き込む!“異端児エンジニア”が仕掛けた社内改革、執念の180日(13)(1/3 ページ)

須藤たちが進めるプロジェクトへの風当たりは、いまだに強い。だが、スーパーで働く元先輩の姿を目にした須藤は、何があってもこのまま引き下がることはできないと、社内改革を進める決意を新たにした。プロジェクトを円滑に進めるには、1人でも多くの味方を得ることだ。それには、どうすればよいのだろうか――。

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「“異端児エンジニア”が仕掛けた社内改革、執念の180日」バックナンバー

これまでのお話
映像機器関連の開発、販売を手掛ける湘南エレクトロニクス(湘エレ)。ある朝、同社が社運をかけて開発した最新のデジタルビデオカメラについて顧客から1本のクレームが入る。そのクレームが引き金となって経営刷新計画が始まり、その一環として450人が希望退職した。湘エレの中堅エンジニア須藤は、会社を何とか変えようと、1人立ち上がる。そして、自分と同じ志を持っていると思われる“仲間”を集め、さらに、東京コンサルティング(Tコンサル)の力を借りながら、自社再建に向けてスタートを切ったのだった。



最後まで悪あがきを

 「会社を変えていく」ために、立ち上がった改革プロジェクトメンバー。その一方で、変革に無関心で、湘エレ(湘南エレクトロニクス)が壊れていく様を横目に見ながらも、自らの出世・昇進にしか目がいかない一部の管理職もいる。

 プロジェクトのリーダーを務める須藤も、直属の上司から、「プロジェクトにかける時間は業務の5%以下にしろ」と、あからさまに圧力をかけられていた。だが須藤は「性根が腐っている」と言い捨てた。須藤は、製造と品証部門が何らかの形で、エバ機の不正に関わっていると薄々感じているが、まだ確固たる確証はもっていない。

 自分たちが会社を変えていこうと奮闘する一方で、「プロジェクトつぶし」を狙う連中も少なからずいると感じながらも、須藤は「最後まで悪あがきしてやる」と誓っている。

スーパーで働く、かつての大先輩を見た須藤は

 最近の須藤は、寝ても覚めても常にプロジェクト、ひいては会社のことを考えている。いや、「考えてしまう」と言った方が適切かもしれない。休日ですら、気が付くと気難しそうな顔をして考え込んでいる。気晴らしにベランダに出てタバコを吸う。空を見ながら、またあれこれと考え始めている。そんな様子を見かねたのか、須藤の妻は、「会社が大変なのは予想つくけど、今日は日曜日よ。あなた1人で会社がどうにかなるなんてことはないでしょう。しんどいのなら、プロジェクトとか降りることはできないの?」と、まだ小さい子供を膝に乗せながら言う。妻の言うことに「あぁ、そうかもしれないな」と空返事をしながら、「ちょっと散歩してくる」と自宅を出た。

 とはいえ、特に行く当てはないので、自宅近くの大型ショッピングモールに向かった。だが、そこで須藤は、数カ月前の希望退職で湘エレを辞めた製造部門のA氏が、食品売り場のカートを片付けている姿を見つけ、がく然とした。

 明るく気さくな人柄で須藤もよくお世話になったA氏には、確か、大学生と高校生の子どもがいたはずだ。希望退職したとは聞いていたけど、なぜ、こんな仕事をしているんだ? 自問自答するが、答えは明確で「良いところに再就職できなかったから」だ。50歳を過ぎた工業高校卒の製造一筋のA氏。湘エレに入社した時には、定年までこの会社に勤めると思ったことだろう。

 あれほど明るかったA氏が、どことなく覇気がない様子でカートを押している姿を見て、とてもじゃないが須藤は声をかけられず、その場を去った。同時に、希望退職で去っていった450人の元社員に思いをはせた。みんなちゃんと再就職できたのだろうか? 今のこのご時世だ、なかなか厳しいのではないか……。エバ機があんなことにならなければ、A氏の人生を狂わすこともなかっただろうに――。

 エバ機の問題は決して須藤の責任ではないが、今の須藤は、A氏に合わせる顔がないと感じていた。そして、こういう状況を招いた黒幕を絶対に許さないと、あらためて心に誓ったのだった。

 結局、気晴らしの散歩は気晴らしにならず、元来、須藤が持っている「ちきしょうめ」という反骨精神を核とした強烈な変革エネルギーが体の奥から湧いてくることを感じていた。A氏のためにも、今のままじゃいられないな……。

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