2次元物質の密集配列単層膜を1分で形成可能に:スピンコート法で多層膜も簡便に
物質・材料研究機構(NIMS)の研究グループは、酸化物ナノシートやグラフェンなどの2次元物質をわずか1分間で、基板上に隙間なく単層で配列する技術を新たに開発した。
ナノシートを用いた各種デバイスを効率よく製造
物質・材料研究機構(NIMS)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の佐々木高義拠点長らの研究グループは2017年7月、酸化物ナノシートやグラフェンなどの2次元物質をわずか1分間で、基板上に隙間なく単層で配列する技術を新たに開発したことを発表した。これまでの方法だと1時間程度要していたナノシートの製膜を、高速かつ効率的に行うことが可能となる。
2次元物質の密集配列単層膜を形成するため、これまではラングミュアブロジェット(LB)と呼ばれる方法が主に用いられてきた。ところが、LB法を使いこなすには操作の熟練度や複雑な条件設定などが必要となる上、生産効率もあまり良くなかったという。
今回の研究成果は、簡便で短時間に製膜できる技術であり、工業化に向けてこれまで障壁となっていた課題を解決できる方法の1つとなる。具体的には、酸化物ナノシートやグラフェンの有機溶媒ゾルを少量、基板上に滴下して適切な回転数でスピンコートを行う。これによって、約1分間という極めて短い時間で、ナノシートを密集配列させることが可能になることを発見した。
ナノシートは厚みが約1nmの分子レベルである。横方向にはその数百倍もの広がりを持ち、水溶液中に分散したコロイド溶液(ゾル)として得られる。水系ゾルをスピンコート法に用いるには粘度が低い。このため今回は、水系ゾルを遠心分離によって、遠心チューブの底にナノシートを沈降させ、傾斜法で上澄みをDMSO(Dimethyl Sulfoxide)と入れ替えた。
このサンプルを、例えば直径30mmのシリコンやガラス基板に数十μl滴下し、毎分1000〜5000回転の速度で回転させた。この結果、約1分で完全に乾燥したという。サンプルを走査型電子顕微鏡で確認したところ、適切な条件で製膜を行うと、基板表面は均一に被覆されていることが分かった。また、各ナノシートは隙間がほとんどなく堆積していることを観測することができた。原子間力顕微鏡による観察でも、ナノシートは密集して単層で基板上に堆積していることが分かった。
これらのデータを解析した結果、単層被膜領域は95%以上、表面粗さは0.5nm程度であることが明らかとなった。この数値は、従来のLB法で形成した密集配列単層膜に匹敵する値だという。
ナノシート単層密集配列膜は、製膜工程を繰り返し行うことで多層にすることができる。今回、酸化チタンナノシートや酸化グラフェンのDMSOゾルを用いて、スピンコートを10回繰り返した。この結果、ナノシートの厚み単位で制御された多層膜のレイヤーバイレイヤー構築が可能であることを確認した。
今回の研究成果は、米国科学雑誌「Science Advances」のオンライン版で、現地時間2017年6月30日に公開された。
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