GUIでニューラルネットワークが設計できる無償ツール:ソニーが一般公開
ソニーは2017年8月17日、ソニーグループ内で活用してきたディープラーニング(深層学習)プログラムの開発ツール「コンソールソフトウェア:Neural Network Console」を一般公開した。
「30倍程度、効率化できる」
ソニーは2017年8月17日、ディープラーニング(深層学習)プログラムをグラフィカルユーザーインタフェース(GUI)ベースで作成できる開発ツール「コンソールソフトウェア:Neural Network Console」(以下、Neural Network Console)の無償提供を開始した。同ツールを使用すれば、これまでのコーディングベースでの開発手法に比べ「ディープラーニングプログラム開発を30倍程度、効率化できる」(同社)という。
ソニーが無償公開したNeural Network Consoleは、2015年からソニーグループ内で運用されてきたディープラーニングプログラム生成用開発ツールであり、「開発ノウハウを機能として凝縮した」(ソニー R&Dプラットフォーム システム研究開発本部 AIコア技術開発部 シニアMachineラーニングリサーチャー 小林由幸氏)。最大の特長は、GUIを使用しクリック操作でニューラルネットワークの設計を完結できる点にある。「GUIでニューラルネットワークをデザインできるツールは、Neural Network Consoleが唯一」という。
64ビット版Windows 8.1、Windows 10に対応するアプリケーションソフトウェアとして提供される。対応するデータは、画像だけでなく、音声や行列、センサーデータなど多様なデータ形式。関数ブロックをマウス操作で組み合わせることで、ニューラルネットワークを構築できる。また、構造自動探索機能と呼ぶ、面倒なパラメーターの調整の一部を自動で最適化する機能なども備える。「最終的なパラメーター調整を行える機能で、精度を高めたり、計算量を小さくしたりといった目的に応じて最適化する」(小林氏)
C++ APIも
ソニーは2017年6月に、ディープラーニング開発用コアライブラリ「Neural Network Libraries」をオープンソース化(関連記事:深層学習のコアライブラリー、ソニーが無償公開)。Neural Network Consoleは、このNeural Network LibrariesをGUI操作できるコンソールソフトウェアという位置付けになる。Neural Network Librariesは、6月のオープンソース化後も機能追加を実施し、Python 2に加え、Python 3によるプログラミングに対応した他、C++ APIも新たに用意。C++ APIは、Neural Network Consoleでも利用でき、「学習済みモデルを、さまざまなデバイスに実装しやすい環境が整った」とする。また、NVIDIAの「CUDA」など特定のデバイス環境に最適化したコードを生成するプラグインなども提供している。
Neural Network Consoleの無償提供に至った理由として小林氏は、「ディープラーニングの開発者への貢献、ひいては社会貢献が目的。ディープラーニングの応用範囲は広く、ソニーだけではカバーしきれない。オープンソースとして提供することで、ディープラーニングの応用範囲が広がればよい」とする。
Neural Network Consoleは、ソニーグループで約800人が使用し、既にNeural Network Consoleで開発した学習済みモデルなどを搭載した製品を複数、商品化している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 深層学習のコアライブラリー、ソニーが無償公開
ソニーは、ディープラーニング(深層学習)のプログラムを生成するためのソフトウェアであるコアライブラリー「Neural Network Libraries」を無償で公開した。 - パナとNVIDIA、ディープラーニングで連携
パナソニック ソリューションテクノロジーは、「第6回 IoT/M2M展【春】」で、NVIDIA製AIスーパーコンピュータ「DGX-1」とGPU「Tesla P100」および、AIスーパーコンピュータを搭載した自動運転の事例などを紹介した。 - IoT時代、ディープラーニングの主用途は制御か
Preferred Networks(PFN)は、IoT(モノのインターネット)にディープラーニングを活用する意義について、自社の応用例を挙げて説明した。また、IoTの普及でデータ量がどの程度増加するかを取り上げた上で、ディープラーニングの処理性能向上に向けた自社の取り組みについて語った。 - ディープラーニングの学習で「世界最高速度」実現
富士通研究所は2016年8月9日、スーパーコンピュータのソフトウェア並列化技術を応用し、複数のGPUを用いてディープラーニングの学習速度を高速化するソフトウェア技術を開発したと発表した。 - 東芝、深層学習を低消費電力で実現する半導体回路
東芝は2016年11月、ディープラーニング(深層学習)の処理を低い消費電力で実行する“人間の脳を模した”半導体回路「TDNN(Time Domain Neural Network)」を開発したと発表した。 - 運転者向けAIや量子ニューラルネットワークを披露
NTTは、2017年2月16〜17日に開催される「NTT R&Dフォーラム 2017」の展示内容を、報道機関向けに説明した。人工知能(AI)によるドライバー支援システムや、光を使って組み合わせ最適化を高速に解く量子ニューラルネットワークなどが紹介された。