試作品の開発費用や期間を50分の1以下に:カシオの2.5Dプリントシステム
カシオ計算機は、独自の新素材「デジタルシート」上に、より細かな凹凸を施しリアルな質感を表現できる2.5Dプリントシステム「Mofrel(モフレル)」を、「CEATEC JAPAN 2017」に出展した。
自動車などの内装デザイン、革や繊維の質感をリアルに表現
カシオ計算機は、「CEATEC JAPAN 2017」(2017年10月3〜6日、幕張メッセ)において、独自の新素材「デジタルシート」上に、より細かな凹凸を施しリアルな質感を表現できる2.5Dプリントシステム「Mofrel(モフレル)」のデモ展示を行った。自動車や建材/家具、アパレル商材などのデザイン検討に必要となる試作品の開発コストや期間を大幅に節減することが可能となる。
デジタルシートは、上質紙ベースの「PAPER基材」とPETフィルムベースの「PET基材」を用意している。ベースとなる基材層と表面のマイクロフィルムの間に、熱によって膨張するマイクロパウダーを塗布したバンプ層やインクジェット層を積層した構造となっている。
バンプ形成に当たってはまず、表面のマイクロフィルム上に、カーボンブラックのインクを用い、グレースケールでバンプデータを印刷する。この基材に近赤外線を照射すると、カーボン分子が発熱してマイクロカプセルが膨張し、バンプが形成される。現在は最大1.7mmまでバンプの高さを制御することができるという。
デジタルシートをフラットにした後、表面のマイクロフィルムを剥がし、表面にカラーデータを印刷すれば完成となる。デジタルシートはA4とA3サイズを用意している。A4サイズの用紙は、バンプデータ印刷から完成までの所要時間が1枚当たり約5分である。
印刷コストは、A4サイズの場合だと用紙代が1000円、インク代が約50円で合計1050円程度と算出している。Mofrelの本体価格は500万円で、インクカートリッジはエプソン製の市販品が利用できる。なお、A3サイズでファブリック素材のエンボス加工試作を行った場合、「従来工法と比較して、開発のコストと期間をそれぞれ50分の1に節減できる」(説明員)と試算する。
基本のデザイン作業は「Photoshop」で行う。Mofrelを利用するためには、PCに専用ソフトウェアをインストールする必要がある。バンプデータを作製するための「Mofrel SURFACER」、2.5Dのプリントイメージを確認するための「Mofrel VIEWER」、Mofrel SURFACERで作製したデータに対して、正常な凹凸を生成できるよう自動で判別、調整するための「Mofrel OPTIMIZER」、Mofrel用デバイスドライバー「2.5D DRIVER」などである。
Mofrelは、2018年2月より正式に販売を始める予定だが、既に自動車のシートや建材、アパレルメーカーなどの一部企業で、試作品の評価が始まっているという。
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